たった2文字の返事
彼の誕生日が2週間後に迫った夜、私はメッセージを送りました。「誕生日、何が欲しい?」と。返ってきたのは「何もいらないよ」の一言。あまりにあっさりした返事に、私は念のため「本当に?」と返しました。すると「うん」と短く返ってくるだけでした。
彼は普段から物欲が薄く、プレゼントの話になっても「気持ちだけで十分」と言う人でした。今回もそういうことかと、私はそのまま画面を閉じました。誕生日当日は彼の家でゆっくり過ごす予定です。プレゼントは用意せず、彼の好きなチーズケーキだけ買って向かおうと決めました。
「ケーキだけ?」と言った彼
当日の夜、彼の家のドアを開けた瞬間、いつもより少しだけ表情が固いように感じました。けれど仕事で疲れているのかな、くらいに思い、私はケーキの箱を差し出しました。「これ、好きなやつ買ってきたよ。お誕生日おめでとう」。
「ありがとう……」と受け取った彼の声は、明らかにトーンが沈んでいました。「ケーキだけ?」と小さく付け加えられたとき、私は一瞬戸惑いました。何もいらないと言ったのは彼のはずです。それでも食卓に着いたあとも、彼の言葉数は少しずつ減っていきました。会話のあいだに不自然な沈黙が挟まり、私のフォークだけがやけに音を立てていました。
