スタジオパーソルでは「はたらくを、もっと自分らしく。」をモットーに、さまざまなコンテンツをお届けしています。
今回お話を伺ったのは、ドラマ『VIVANT』でバルカ共和国の外務大臣・ワニズを演じ、強烈な存在感を放った俳優の河内大和さんです。さらに映画『8番出口』では、地下通路を淡々と歩くおじさん役を怪演。その活躍が評価され、第49回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞しました。主に10代〜20代の俳優が受賞することの多いこの賞で、47歳での受賞は大きな話題に。
「遅咲き」と言われることも多いという河内さんですが、本人はむしろ「こんなに早くチャンスが来るとは思わなかった」と語ります。俳優として長い下積みを歩んできた河内さんに、「はたらく」のヒントを伺いました。
コンプレックスが多いぼく。自分じゃない誰かになりたかったから
——ドラマ初出演だった『VIVANT』を皮切りに、『8番出口』、さらに2026年は憧れだったという大河ドラマにもご出演されています。今の状況を、ご自身ではどのように捉えていらっしゃいますか?
純粋に、とてもうれしいです。長年舞台を中心に活動してきましたが、「いつか必ず映像作品に出演したい」と思い続けていて。その念願がかなっている今、本当に「うれしい」の一言に尽きますね。

——そもそも、どうして俳優を目指されたのでしょうか。
自分じゃない誰かになりたかった、それが原点です。小学生、中学生のころ、ぼくは自分のことが全然好きになれなかったんですよ。見た目も性格も含めてコンプレックスが多くて、同級生ともうまく関係を築けない。そんな自分がとにかく嫌いでした。クラスには、自然と周りに人が集まってくる同級生がいるじゃないですか。そういう人がすごくうらやましくて、いつも「自分もあんなふうになれたらいいのに」と思っていました。
そんな気持ちを抱えたまま高校に進学したのですが、そこで洋画好きの友人ができたんです。その友人がハリウッドやヨーロッパなど、たくさんの映画を教えてくれて。いろんな作品に触れる過程で、さまざまな役を自在に演じる俳優たちを見て、「自分じゃない誰かになれる」ことに胸を打たれました。そのうち、自然と俳優たちの真似をするようになったんです。

——誰かの前で披露したこともあったんですか?
友人には見せていました。ブラッド・ピットが大好きで、1995年公開の犯罪スリラー映画『セブン』のラストシーンをよく真似していました。それで、真似するぼくを見た友人がすごく喜んでくれたんですよ。今振り返ると、それが「演じる喜び」をはじめて実感した瞬間だったのかもしれません。
長い下積みが続いた俳優人生。そしてやってきた『VIVANT』への出演依頼
——その後、新潟の大学で演劇研究部に所属されたとお伺いしました。演劇に夢中になったのはどうしてですか?
大学入学時の新入生歓迎ステージで、演劇研究部のパフォーマンスがおもしろくて印象に残ったのがきっかけです。入部したあと、はじめて劇作家・野田秀樹さん演出の『野獣降臨(のけものきたりて)』の映像を見たんですけど、「こんなに面白い世界があるんだ!」と衝撃を受けました。それ以来、野田秀樹さんの演劇を真似るようになりましたね。

その後、演劇の奥深さにどんどん魅了され、結局大学は中退して。アルバイトを掛け持ちしながら、新潟で役者として活動を続けていました。ただ、27歳のある日、ふと「自分はなぜ演劇をやっているんだろう」と虚無感に襲われたんです。先の見えない生活を送る中、気付けば声が出なくなり、精神的にも参ってしまって……簡単にいうと挫折ですよね。地元である山口に帰り、1年半ほど芝居から離れていました。
——どのようにして、再び演じる世界に戻ってきたのでしょうか?
新潟でお世話になっていたスタッフの方から、「海外公演の主役をやらないか」と声をかけていただいたんです。そのときのぼくは正直、「この舞台を最後に俳優をやめよう」と思っていました。
ところが、海外公演を終えて新潟で凱旋上演を行ったとき、客席から「待ってました!」という大歓声が上がったんです。あの光景は今でも忘れられません。ぼくのことを待ってくれている人がいる。その瞬間、「やっぱり自分は俳優として生きていきたい」と強く思いました。
——その後、2011年に上京されたのですよね。
はい。ただ、上京してからも順風満帆というわけではありませんでした。上京して2日目に東日本大震災が起きましたし、2020年には新型コロナウイルスの影響で仕事がゼロに。

それでも少しずつご縁に恵まれ、舞台に立ち続けることができました。俳優の吉田鋼太郎さんの舞台に出演させていただいたり、演出家の蜷川幸雄さんと出会えたり。そして40歳を前にして、ようやく俳優の仕事だけで生計を立てられるようになりました。2021年には、ぼくの憧れであり、劇作家、役者、演出家として数多くの話題作を手がける野田秀樹さんから声をかけていただき、舞台『THE BEE』のメインキャストの一人として出演。その舞台を、ドラマ『VIVANT』のプロデューサーが観てくださっていたようで、出演のお話をいただくことになりました。

