完結編となる後編では、彼女が2022年に設立した新会社「EMRJエンターテイメント」が描く未来像、そして名作文学『嵐が丘』を大胆にホラー映画化する最新プロジェクトに迫る。さらに、次世代の女性フィルムメーカーへ贈る実践的なアドバイスと、日本で今すぐ観られるプロデュース作品リストを紹介する。
■ベッカ・ヒラニの新たなる挑戦、EMRJエンターテイメントの進撃
設立後、彼女たちは長編ホラー映画『The Monster Beneath Us(足下に潜む怪物)』を発表し、インディーズ映画界において鮮烈なスタートを切った。
社名に込められた想いについて、ベッカは穏やかな口調で語った。
「EMRJという名称は、実は私の最愛の父の会社名からそのまま受け継いだものです。長年にわたって私の挑戦的なキャリアを無条件で支え、励まし続けてくれた大切な家族への、最大級の敬意と深い愛情を形にしたものです」
EMRJエンターテイメントは、かつてのプロポーション社同様に、エッジの効いたホラーやスリラーといったジャンル映画の製作を主力事業として位置づけている。一方で、今後はドキュメンタリー映画など新たな分野への事業拡大も視野に入れている。
限られた予算の中でも妥協せず、洗練された作品をコンスタントに世に送り出すことに注力していくという。プロポーション社の初期作品に見られたような、高いメッセージ性と強烈な恐怖表現が融合した新作ホラー映画を、私たちは再び目撃することになりそうだ。
■文学の名作『嵐が丘』がまさかのホラーに!『ガウンとゴア』シリーズの野望
EMRJエンターテイメントが放った長編ホラー第1作『The Monster Beneath Us』は、単なるクリーチャー映画の枠に収まらない。人種問題、階級社会の歪み、精神的な葛藤といった現代的テーマを内包し、物語に深みを与えている。
当初の脚本段階では現代のイギリスを舞台としていた。しかし、ゴシックホラーやコスチューム劇を心から愛するベッカの強いこだわりによって、舞台はあえて19世紀へと変更された。
インディーズ映画において衣装や美術に大きなコストがかかる時代劇を選ぶことは、ビジネス面でも大きな挑戦だ。それでも実現させた事実こそ、ベッカが新会社EMRJに注ぐ情熱の大きさを物語っている。
現在、EMRJエンターテイメント内部では、多くの刺激的な企画が同時進行している。その中でも特に注目を集めているのが、エミリー・ブロンテの不朽の名作『嵐が丘』を独自の解釈でホラー映画へと変貌させるプロジェクトだ。
「最新作としてアナウンスしている『嵐が丘:呪われた家(Wuthering Heights: The House of the Damned)』は、私たちが今後さらに力を入れて製作を予定している、クラシック文学と強烈な恐怖表現を融合させた『ガウンとゴア(Gown and Gore)』シリーズの第一弾となります」
ホラーの世界で活躍するベッカが手掛ける『嵐が丘』である以上、従来の文学映画とはまったく異なる、衝撃的で濃密な作品になることは間違いない。この『ガウンとゴア』シリーズが、今後のホラー映画界をどのように塗り替えていくのか、期待は高まるばかりだ。
