おしゃれに線引きはない
――ムスリムの方々に施術する上で、宗教上の配慮などはありますか。
ムスリムの方々は1日5回お祈りをするのですが、その前にお清め(ウドゥ)をする習慣があります。水が爪の表面にまで届かないといけないため、ネイルをしているとしっかりお清めができないという考えが残っています。
そこで、お祈りのときだけ外して、終わったらまた付け直せるネイルチップを提供したところ、とても人気が出ました。以前は、生理中の1週間だけ(お祈りをしなくてもいい期間)しかネイルができない子もいたのですが、チップならいつでも着脱可能なので、楽しめると喜ばれています。
――ムスリムの中にいると、ファッションにもいろいろと制限があると思います。そんな中、森下さんは独自のファッションセンスを貫いていますよね。
自分のファッションスタイルを「マッハ」と名付けて提唱しています。金髪で長い爪をしていると「ギャル」や「サイバー」と言われがちなんですが、どれもしっくりこなくて、Y3K(3000年代風の未来的ファッション)のような未来志向やギャルのマインドなど、すべての要素をくっつけたうえにそれを超えていくような、自分の哲学と生き様を体現したスタイルです。
こういったスタイルをするのには、ただ自分自身の脳内や生命力をありのままに表現したいという思いからきています。その背中を見ることで、いろんな人が自分の好奇心を恐れずに解放するきっかけになれば嬉しい。
私のファッションやネイルを通して、それぞれの価値観を大切にしながら、おしゃれを楽しむマインドが国籍や宗教を超えて広がってほしいなと思ってます。
ムスリムの文化が根付くドバイに、日本の「カワイイ」文化やギャルをも超えて「マッハ」という新しいジャンルと哲学、そして未知なるきらめきの世界観を持ち込んだ森下さん。彼女が描く指先のきらめきは、中東の女性たちの未来を、より鮮やかに照らし続けていくに違いない。
後編では現在の中東情勢の中、ドバイに居続ける理由をうかがう。
取材・文/木原みぎわ

