熱量あふれたSNSが店の起点になった。
『コレ、すごくない?』
サカイさんが思わず声をあげたのはニキルキャップスの存在を知らしめようと作ったZINE(同人誌)を編集している時だった。
「ケチャが偏愛してるオモチャの記事を書いたんです。マニアックなフィギュアについて濃密に語り尽くされていて圧倒された。ガシャポンの筐体まで家にあるような人でしたからね、彼は」(サカイ)
サカイさんの勧めでケチャさんはインスタのアカウントを開設。自慢のヴィンテージトイと解説をアップしはじめた。サイボーグの刑事のフィギュアとか、『遊戯王』のアメトイとか――。毎日必ずアップされる独特のオモチャと尋常じゃない熱量の投稿に、1万人弱のフォロワーがすぐについた。
『一緒に店やらない?』
サカイさんが、また子供みたいに声をかけた。
「父の影響もあって自分の店を持ってみたい思いがあった。ただそのネタが自分にはない。そしたら隣にすごいヤツがいて」(サカイ)
ケチャさんも乗り気だった。そして高円寺の今の小さな場所に空きが出た噂を聞いて、飛びつく。
こうして『PHIL』は誕生した。インスタで知ったマニアックなオモチャ好き、音楽系の仲間たち、高円寺の街巡りをするインバウンド客。雑多な人がわずか6畳に集う場所になった。オープンから2カ月後には2人とも会社を辞め、音楽とオモチャの二刀流で走ることを決めた。
「気がつけば“安定”とはかけ離れた道に立っちゃっていましたね。大丈夫かな?」(サカイ)
「やるしかないよね」(ケチャ)
2人は同じ方向を見てステージに立つ。これからもずっとだ。

ヒップホップ・アーティストとしての顔もあります。
2人のオーナー・KECHA&Sakaiさんは「NyQuilCaps(ニキルキャップス)」というクルー名で活躍するヒップホップアーティストでもある。同時に、中野の『heavysick ZERO』で隔月で開催されているパーティのレギュラーメンバーからなるヒップホップコレクティヴ「Oll Korrect」のメンバーでもあるのだ。オモチャ&ラッパーって、最高の二刀流のひとつでは?

KECHAさんとSakaiさんの2人がMCをつとめている「NyQuilCaps」。

今年で13年目に突入したイベント「Oll Korrect」。参加者たちがコレクティヴ(集団)としても活躍中なのだ。
90年代のクセ強めのモノを中心に。PHIL流セレクトのヴィンテージトイたち。
スターウォーズやアメコミモノなど、わかりやすいアメトイはあんまりない。カウンターカルチャーの香ばしさが漂う、ちょっとひねくれたオモチャを置くのが『PHIL』のグルーヴなのだ。
Heinz LEADER OF THE Packets


ハインツケチャップのぬいぐるみ。「Lightningさんっぽいかなと」(Sakai)。5,800円
McDonald`s Grimace

マックのキャラ「グリマス」のぬいぐるみ。1984年製だ。「ヘッドホンがいいなと。音楽モノは仕入れがちですね」(KECHA)。12,000円
Computer Bean Bags

こちらはコンピュータがモチーフ。「名前はBITやRAMです」(KECHA)。3,800円〜
Snoop Dogg

アイコン力高すぎなスヌープのフィギュア。「MVで子供が遊んでいたフィギュアがモチーフ」(Sakai)。15,000円
Capitol Critters MUGGLE

90年代のアニメ『キャピトルクリッターズ』のキャラ。「ホワイトハウスの地下に住むネズミたちなんですよ」(Sakai)。4,800円
オリジナル・アパレルも人気です。


オモチャ店のカッコいいTシャツという、難易度の高そうなデザインを形に。OllKorrectのメンバーが手掛けたものだ。4,400円

9.900円
【DATA】
PHIL(フィル)
東京都杉並区高円寺北3-3-10
不定休
※営業スケジュールはInstagram:@phil_toystoreをチェック
(出典/「Lightning 2026年5月号Vol.385」)