弟ばかりに注がれていたお金
高校3年生のとき、進路相談の場で母は「家計のことを考えて、できれば国公立にしてほしいの」と私に頭を下げました。私はその言葉を受け入れ、必死で勉強して公立大学に進んだのです。新しい服も、入学祝いの腕時計もありませんでした。
それから3年後、弟は当たり前のように私立大学を選びました。さらに大学3年で「留学したい」と言い出し、両親はそれも認めて貯金を切り崩しているようでした。私は耐えきれず、ある日の夕食の席で母に詰め寄りました。「弟にばかりお金をかけて、私には何もしてくれなかったよね」。母は何も言い返さず、ただうつむいていました。その日から、私は両親と少しずつ距離を置くようになっていったのです。
結婚を控えて戻った実家
それから10年以上が経ち、私は春に結婚を控えていました。新居に私物を運ぶため、土曜日に久しぶりに実家へ帰省したのです。母は「全部好きに持っていきなさい」と、段ボールとガムテープをきれいに揃えて待っていてくれました。私は短くうなずいて、二階の自室に上がりました。
机、本棚、クローゼットの順に片付けていきました。母は台所で夕飯の準備をしているようで、ときどき包丁の音が聞こえてきます。最後にデスクの引き出しを開けたとき、一番奥に見覚えのない厚みのある封筒があるのに気づいたのです。
