6月12日公開の劇場版『旅人検視官 道場修作』で主演を務める内藤剛志が本誌に登場。松山ロケの舞台裏、サスペンスの魅力や俳優論、佐野史郎や舘ひろしら名優たちとの交流、さらには知られざる〝芸能界の掟〟まで赤裸々に語っていただいた!
劇場版で初めて向き合う“語られなかった過去”
――劇場版は、ドラマシリーズとひと味違った見どころがあると思いますが、いかがでしょうか。
内藤剛志(以下、内藤) 劇場版といっても、スタッフはそのままだし、機材も同じものを使うので大きく変わりはないんです。違いがあるとしたら観方です。好きな時間に、なおかつ多くの知らない人と一緒に見るのが映画ですし、2時間、目を離さない状態にするには何をするかを考えたのがドラマとの違いです。
――ドラマシリーズと同じように楽しめつつ、劇場版ならではの仕掛けもあると。
内藤 基本的にロケ地の風景や食べ物を楽しみながらのサスペンスという点は、劇場版でも変わりません。ただ、これまで奥さんの由美子のこと以外は過去を語ってこなかった道場修作が、その過去へ向かってドアを開けるんです。そこが映画ならではの見どころだと思います。道場の過去の話は、映画化でぜひやってみたかったことなんです。
――劇場版の舞台は愛媛県松山市です。現地の印象はいかがでしたか。
内藤 松山は他のドラマや旅番組で何度も足を運んでいる街です。松山の魅力はもちろん俳句もあるんですけど、3000年の歴史がある道後温泉があって、多くの人がいろんな思いを抱いてきた場所だと思うんです。楽しい思い出も、反対につらいことがある方もいらっしゃっただろうし、そんな濃厚な人の重みみたいなものが空気にぐっと凝縮されている街だと、僕は思いますね。
――歴史ある温泉地ならではの人と空気ということでしょうか。
内藤『道場修作』シリーズでは温泉地を巡ることが多いのですが、温泉って何かを癒やしに来たりする場所じゃないですか。つまり、何か癒やさなきゃならないことがあったわけだから、非常に人間味が濃厚な場所だなと思います。あと松山に関しては、街の明るさも印象的です。明るくて、美味しいものがたくさんある街です。
――お言葉のとおり、作品には松山の名物や名所がたくさん出てきます。特に内藤さんの心に残ったものは?
内藤 やっぱり鯛ですね。僕は関西出身ですから、子供の頃から鯛を食べてはいたんですけど、瀬戸内の鯛はちょっと特別で、味が濃くて美味しいんです。映画をご覧になって、僕がいただいた鯛めしを食べてみたいと思っていただけると嬉しいです。あと、ミカンジュースもめっちゃ美味いですよ。
――劇中に登場したアレですね!
内藤 ジュースの提供方法にはびっくりしました。松山はとにかく柑橘が美味しい。僕はある柑橘のお店と30年以上付き合いがあって、そこからいつも買ってお使い物にさせていただいているくらいです。松山のいいところを伝えている映画でもありますから、街の良さを感じてもらいたいです。
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里見浩太朗、柄本明、角野卓造…内藤剛志が絶大な信頼を寄せる名優たち
――出演者の方についても教えてくださいますか。
内藤 映画化となったときに、こういう方々に出ていただきたいとプロデューサーさんに申し上げたんです。特に、上司や先輩として道場を叱ってくれる人。お名前の例を挙げると『水戸黄門』でご一緒した里見浩太朗さん。そして僕が20代からお付き合いがある柄本明さんや、何度も共演させていただいている大尊敬する先輩の前田吟さんに角野卓造さん。すごいと思ったのは、僕のリクエストを全員が受けてくださったことです。
――由美子さん役には南果歩さんがキャスティングされました。ドラマでは固定の女優さんはいませんでしたが、南果歩さんの由美子さんはいかがでしたか?
内藤 果歩ちゃんはストライクですね。僕、時代劇『はんなり菊太郎』(NHK)を2002年から3シリーズやったんですけど、その恋人役が果歩ちゃんです。だから、江戸時代からパートナーなんですよ(笑)。ドラマの第7作の撮影を先日までやっていたんですけど、『由美子』って言った瞬間にその顔が浮かぶんですよ。
――松山の魅力と、実力ある俳優陣が繰り広げる劇場版に期待を寄せられている方も多いと思います。『道場修作』シリーズも含めて、そもそもサスペンスドラマの魅力ってどういうところにあるのでしょうか。
内藤 気軽に楽しめるエンターテイメントという意味でいろいろ揃ってますね。例えば、サスペンスがあるから解決を知りたくなって、物語に引き込まれます。殺人がいいとは決して思いませんけど、その謎解きが最大の魅力のように思います。2時間、実質は90数分間のなかで1つのストーリーを語りきるという点もいいと思います。そしてその途中に、ご当地の名所や名物が入ってきます。でも、それを僕たちがかつて当たり前にやってしまってダメにしてしまったわけです。なので、『道場修作』シリーズは、使い切ってしまった資源をもう1回考え直す〝2時間ドラマの第2章〟だと思ってます。僕やスタッフ全員で考えた新しい見せ方を取り入れつつ、サスペンスと、誰かの人生の一端をちょっと感じられるという2時間ドラマの魅力は失わないで作っていきたいです。
――確かに『道場修作』は温故知新を感じる作品です。
内藤 こうやって一生懸命喋る1つの理由は、『道場修作』をご存じない方がいらっしゃるからなんです。知らないのは全然いいので、知らない人が見ていただくまでが重要だと思うんです。入口としては『何この映画?』『内藤がまた刑事やってるね』と思ってくださってもいい。見ていただいて、『ああこういうことか』って。定年退職した男の第二の人生とか、奥さんに対する思いとか、そういう生き方もあるんだなって思ってもらえればいいなと思います。
