大手出版社から独立後、フリーランスとして世界中を旅しながら執筆活動などを行ってきた安藤美冬さん。「ノマドワーカー」の先駆けの1人でもある安藤さんは2025年、ミステリー専門のエンターテインメント事業を行う「株式会社UNROUTE」を立ち上げました。第1回目のミステリーツアーイベントはチケット即完売となるなど大反響を呼び、現在は今年7月の第2回目イベントの準備に奔走しています。長らく、場所にとらわれない自由な働き方をしてきた彼女がなぜ、経営者という道を選んだのか? そこには「好き」を仕事にするからこその情熱と覚悟がありました。
自分の「好き」を追求し、ミステリー専門のエンタメ会社を設立
――現在は「株式会社UNROUTE」で代表取締役を務めていらっしゃいます。フリーランス時代とは真逆の選択といえますが、背景にはどのような決断があったのでしょうか。
私は30代はずっとフリーランスで、メディアでも「ノマドワーカー」と紹介されていたように、ノートPC一つを抱えて旅をしながら、本を書いたり、セミナーの講師をしたりと、「一人で、自由に働く」という働き方を選択し続けてきました。
でも実は一方で、ずっと葛藤があったんです。当時の私は、「5W1H」でいうところの「How」、つまり「どう働くか」を追い求めていたけれど、「What」の部分は空白のままだった。「私が一番したいことは何だろう?」という思いが心の片隅に残っていました。

2026年1月の安藤美冬さんの誕生日にはミステリー形式で会社設立発表会を実施
――実際に、「自分が一番したいこと」が見つかったきっかけはなんだったのでしょうか。
大きかったのはコロナ禍ですね。世界中がステイホームを余儀なくされるなかで、多くの人が従来の価値観を揺さぶられ、自然と生き方や働き方を見つめ直すようになった。私もちょうど40代を迎えて、自分に向き合う時間はたっぷりあったから、そこであるとき「脚本を書いてみよう!」と思い立ったんです。子どもの頃に自分が夢中だったドラマや映画の、見る側ではなく作る側になってみたい。そこで、シナリオの学校に通い始めたのが2021年のことです。

出典:UNROUTE公式サイト
シナリオを実際に書いてみて、一番ハマったのがミステリーのジャンルでした。そういえば、子どものときからコナン・ドイルやアガサ・クリスティー、江戸川乱歩などの本を読み漁っていたなとか、生まれ変わったら名探偵になりたかったんだっけ、といった原体験を思い出して(笑)。ずっと探していた、「私の『What』はミステリーだったんだ!」とハッとしました。でも、脚本コンクールに応募しても落選が続き、そしてとうとう、「こうなったら、自分が好きなミステリーの世界を、自分で作るしかない」と、2025年9月、「株式会社UNROUTE」を設立しました。ミステリー専門のエンターテインメント事業などを行う会社です。
第1回目のイベントは200枚以上のチケットがわずか4時間で完売
――第1回目のイベントはとても好評で、再演も決まったそうですね。
会社設立後すぐ、さまざまな人との縁でトントン拍子に第1弾が決定し、2026年の初めに、紀伊國屋書店新宿本店のオールナイトフェスイベントの一部として、閉店後の本屋さんを舞台にしたミステリーツアーを開催することになりました。

紀伊國屋書店のオールナイトフェス「KINOFES(キノフェス) 2026」の様子
当社は事業の一つに、ストーリー体験型ミステリーツアーの企画・制作・運営というものを掲げていて、参加者の方たちには実際の建物やエリア内を回遊しつつそこで巻き起こるストーリーを体験してもらう、イマーシブ(没入感)要素の高いイベントを手がけています。
初めての試みでしたが、なんと、6600円のチケット、二百数十枚がわずか4時間で完売。もちろん、紀伊國屋書店さんのファンダムや、博報堂さんのプロモーション力などの相乗効果があってこその結果ですが、多くのお客様が、「よくわからないイベントだけど、面白そう!」という期待感でチケットを買ってくださったことに、大きな手応えを感じました。
