絶望の淵で、守り抜いた信頼と品質
順風満帆に見えた2000年代後半、最大の危機が訪れる。主力スタッフ5名の離脱と、倒産寸前の資金繰り悪化だ。
「正直、会社を売ることまで考えました。一部上場企業の社長に会いに行きましたが、最終的に破談。あの時が人生で一番絶望した瞬間でしたね」。
そんな窮地を救ったのは、染谷さんの誠実さが生んだ人徳とブランド力だった。家主や仕入れ先が、染谷さんの再起を信じて家賃の減額や支払い条件の緩和を申し出たのだ。
「お付き合いをさせていただいていた商業施設や企業の方々など、温かいみなさんの心づかいで支えていただいてピンチを乗り越えられました。自らの不徳を恥じると同時に、人との繋がりのありがたさが身に沁みました」。
逆境のなか、起爆剤となったのはスタッフたちが現場で考案したカットオフデニムだった。
「スタッフたちが一生懸命考案したカットオフデニムが爆発的に売れ、V字回復のきっかけとなりました。続いて、ベイカーパンツやチノパンツなどのヒット作が生まれ、それをきっかけに再び、自分たちが信じる価値を再構築していったのです」。
以来、染谷さんは「オリジナル商品のシーズン内セールをしない」という業界でも異例のスタイルを貫いている。
「頻繁なセールは顧客の信頼を損なう。本当に良いものを長く大切に、10年20年と着てもらうためのものづくりを大切にしてきました」。