国際金融メディア・ロイターのコラムが放ったこの一文は、国内報道の温度とはまったく異なる“海外の視点”を突きつけている。ホルムズ海峡の封鎖、TOTOの受注停止という未曾有の事態が続く中、首相官邸の優先順位に対する国民の不信感が高まる一方で、海外の市場関係者はすでに高市政権のエネルギー政策そのものに厳しい評価を下している。
ロイター・ブレイキングビューズのアジア担当コラムニスト、ハドソン・ロケット氏は、2026年6月1日付の論評で「Japan's Takaichi is her own worst energy enemy(高市氏はエネルギー政策において自らが最大の敵となっている)」と題し、高市政権の政策運営を鋭く批判した。国内メディアが「物価高対策」として好意的に扱う補助金政策についても、同氏は「近視眼的で財政を浪費し、インフレと円安を加速させる」と指摘している。
巨額の補助金が生む“政策依存”の危うさ
ロケット氏の論評によれば、高市政権はガソリン価格を170円前後に抑えるため、備蓄放出と補助金投入を続けているが、世界的な価格高騰の前では効果が限定的だという。結果として、価格調整のために巨額の国費が投じられ、財政負担が増大している。
さらに高市首相は、燃料費高騰と補助金財源を賄うため、これまで慎重だった国債増発に踏み切り、3兆円規模の補正予算を要求した。ロケット氏は、こうした政策が「円安圧力を強め、国内物価を押し上げる悪循環を招く」と警鐘を鳴らす。
補助金によって“痛み”を覆い隠す政策は、消費者の行動変容を妨げ、結果として構造改革を遅らせる。日銀の上田総裁も、短期的なエネルギーショックであっても、政策対応次第では持続的なインフレにつながる可能性を指摘している。
原子力推進派でありながら“本丸に踏み込まない”矛盾
ロイターの論評で最も厳しい指摘は、高市首相自身が原子力推進派として知られているにもかかわらず、危機を原発再稼働の説得材料として十分に活用していない点だ。日本は福島第一原発事故以降、54基の原子炉の大半を停止し、再稼働は限定的にとどまっている。
エネルギーの約8割を化石燃料輸入に依存する日本にとって、原発再稼働は供給安定性を高める重要な選択肢であるにもかかわらず、政治的リスクを避けて踏み込まない姿勢が、海外からは“ポピュリズム的”と映るという。
また、ガソリン価格を市場に委ねていれば、日本の自動車メーカーがEV開発に本格的に舵を切る契機になった可能性も指摘されている。高市首相が中国製太陽光パネルへの依存を懸念する一方で、原発再稼働には慎重な姿勢を崩さない点も、海外からは一貫性を欠くと見られている。
