4. インフラ:「クラウドの常識」を超えて。「絶対に落とさない」ためのプロフェッショナルな決断
▲写真:Infrastructure Development Headquarters Architecture Division2 櫻井 拓海さん
最後に登壇したインフラエンジニアの櫻井さんは、このプロジェクト最大の課題、「潜在ユーザー数10倍超」という巨大なトラフィックをどうさばき切るか、その心臓部を担いました。
急激なアクセス増にどう備えるか?「リスクがあるなら、コストよりも安定性を優先する」
「絶対にシステムを落とすな」。CIOからの至上命題を受け、櫻井さんは3つの懸念を洗い出しました。
1.GKE(※)のスケールアウト速度:負荷に応じて処理能力を自動で増減させる「オートスケール」は、稼働までに数分のタイムラグがある。急激なアクセス増加には間に合わないのでは?
2.DBの性能:データベースは想定される高負荷に耐えられるのか?
3.クラウドのクォータ抵触:Google Cloud側で設定されたリソースの上限に達してしまうのではないか?
※GKE:Google Kubernetes Engineの略。Google Cloudが提供する、コンテナを自動的に管理するサービス。
最初の壁、GKEのスケール速度問題。櫻井さんの提案は、コスト効率を重視するクラウドの常識をある意味で覆すものでした。
櫻井さん「『オートスケールが間に合わないリスクがあるなら、コストよりも安定性を優先し、最初から最大構成で臨む』。それが、私たちが下した最も合理的な判断でした。」
これは「先行スケール」と呼ばれる手法。コストはかかりますが、「絶対に落とさない」という信頼性を最優先した、プロフェッショナルな経営判断でもありました。
最後は「地道な試算」がモノをいう
DBのコネクション数上限や、クラウドのCPU総数といったクォータの壁に対しては、魔法のような解決策はありません。
櫻井さん「GKEにデプロイされている全てのワークロードを洗い出し、CPUやメモリの使用量をスプレッドシートで緻密に計算しました。その結果をもとに、Googleへ事前に上限緩和を申請する。結局、インフラの安定稼働は、こうした泥臭いとも言える作業の積み重ねによって支えられているのです。」
クラウドを使えば何でも自動で解決されると思われがちですが、大規模トラフィックを支える鍵は、最新技術の知見と、それを使いこなすための地道な準備と計算、そして「安定性を死守する」という強い意志でした。
なぜ、みんなの銀行は「挑戦」を楽しめるのか?
4人のエンジニアが語った、それぞれの挑戦。
技術的な面白さはもちろんですが、何より印象的だったのは、全員が「大変だった」と語りながらもその表情がとても誇らしげで、楽しそうだったことです。
なぜ彼らは、これほどの巨大な壁を楽しみ、乗り越えることができたのか。
その答えは、このイベントの母体である「Zero.Lab」という文化そのものにありました。
「Zero.Lab」は、月に一度、業務時間内に開催される社内登壇会です。この取組みの目的と、2023年以降は年に1回、社外に公開している理由について、宮本CIOはこう語ります。
宮本CIO「元々Zero.Labは、純粋に社内エンジニアのための文化として始めました。目的は大きく3つです。
一つ目は、チームや領域の垣根を越えて知見を共有し、互いのコミュニケーションを活性化させること。
二つ目は、資料作成や登壇を通じて、プレゼンテーション能力といったソフトスキルを磨き、登壇者自身の価値を高めること。
そして三つ目が、仲間の挑戦に触れることで自己研鑽への刺激を受け、組織全体で高め合う風土を醸成すること。
エンジニアがもっと気軽に表舞台に立ち、自分の仕事をアピールできる。そんな機会が、個人の市場価値を高め、組織の力になると信じています。」
そして今回、この熱気あふれる文化を社外の方にも体感してもらうべく、「Zero.Lab Open Day 2026」が開催されました。
宮本CIO「私たちの挑戦やカルチャーをありのままに見ていただくことで、まずはゼロバンク・デザインファクトリーという会社のことをもっと知っていただきたい。そして、この記事を読んでくださっているあなたのような、未来の仲間と出会うきっかけにしたい。今回のイベントには、そんな採用への想いも込められています。」
この文化を象徴するのが、新作ステッカーのキャラクター。凛々しい表情のキャラクターの頭の上には、一見すると「バグ」にも見える、王冠のようなアイコンが乗っています。これは、挑戦の過程で生まれる困難さえも、成長の糧として乗り越えていく、私たちのカルチャーを象徴しています。
宮本CIO「バグや失敗さえも自分たちの一部として受け入れ、それを乗り越えて成長していく。そんな想いを込めて、デザインもできるフロントエンドエンジニアと一緒に作りました。銀行という堅いイメージを超えて、エンジニアが失敗を恐れずに発言できる心理的安全性を、こうした遊び心で作りたかったのです。」
個々の技術力はもちろんのこと、「自分の知見を惜しみなく共有し、仲間の挑戦をリスペクトする」。Zero.Labで培われたこの文化こそが、今回の巨大プロジェクトを成功に導いた最大のエンジンだったのです。
おわりに
巨大な挑戦の裏側で、エンジニアたちは何を考え、どう乗り越えたのか。「Zero.Lab Open Day 2026」のレポートでは、その一端として、「銀行」という枠組みを超え、モダンな技術と地道な努力、そして遊び心を持って課題に立ち向かう彼らの姿をお届けしました。
みんなの銀行、そしてゼロバンク・デザインファクトリーは、これからも「挑戦」を楽しみ、それを乗り越えることで、新たな価値を創造していきます。今回のレポートで紹介した、困難なプロジェクトを成功に導いたエンジニアリング文化やその裏側にあるストーリーから、読者の皆様が何か一つでも得られるものがあれば、大変嬉しく思います。
※この記事は、みんなの銀行公式ブログ「note」からの転載です。
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公式サイト:https://www.minna-no-ginko.com/
(執筆者: みんなの銀行)
