2006年にスイス・ヴェルビエで産声を上げたスキーブランド「FACTION(ファクション)」。コアなスキーコミュニティへの貢献を目指して立ち上がったブランドは、20年の時を経て、いまや広く世界に知られる存在となった。一方で日本におけるFACTIONはどんな歩みや運営をしてきたのだろうか。その様子を探ろうと、拠点としている妙高・信濃町を訪ねた。
妙高の麓に根を張る「現場主義」の拠点


長野県信濃町の国道8号線沿いにヘッドオフィスとスキー・スノーボードショップを構えるFACTIONジャパン。車を15分ほど走らせれば妙高杉ノ原スキー場、上信越自動車道・信濃町ICまでは5分という、滑り手にとって理想的な立地だ。
ここでブランドの国内展開をハンドリングしているのは、高井伸幸とその仲間たち。元々FACTIONのライダーとして活動してきた高井は、のべ18年にわたってブランドと関わってきた。彼が代表となり、現体制となってからは2026年で10年目を迎える。
活動の根底にあるのは、ブランドのコンセプトでもある「現場主義のコミュニティ」を日本でも形にすることだ。
拠点を山のすぐ近くにある信濃町に選んだことが、ブランドの方向性をよく表している。当初は東京など都市圏に拠点を置く案もあった。しかし高井は本国にこう伝える。「本社がヴェルビエの麓にあるならば、日本も山の近くにオフィスを構えるべきだ」
高井は妙高市にある国際スノーボード&スケートボード専門学校(JWSC)に在籍していた。このエリアを熟知しているからこそ、ここをベースにブランドの運営をすることは自然な成り行きだった。最終的には本国スタッフが実際に現地を訪れ、そのロケーションを見て納得したことで、妙高を拠点に据えることが決まったのである。
「妙高、黒姫、飯綱、斑尾、そして野沢温泉までもが車で約40分圏内。周囲に山がたくさんあるのが一番の良さです」
山の近くにあるからこそ生まれる熱量



雪山の近くに拠点を構えることは、滑り手による滑り手のためのブランドにとって、理にかなっている。周辺に住むスキーヤーやパトロール、リゾートの従業員、そして熱心なコアスキーヤーたちと直接的な関わりを持てるからだ。地域のコミュニティと密接な関係性を築けるのは、現場志向のブランドにとってはなによりも強みとなる。
伝統的にスノーボードシーンが強い妙高エリアだが、この10年で新しい風が吹きはじめている。妙高杉ノ原スキー場のベースにはFACTIONのテストセンターができ、パークには若いスキーヤーの姿が目立つようになった。地元のスノーボーダーからも「カッコいいスキーヤーが増えた」と評されるという。それは、スクールなどの商業的な活動だけではなく、実際に山でカッコよく滑る大人たちの姿を間近で見られる環境が、次世代を刺激している証拠だろう。
なによりも、FACTIONが大切にしているのは、技術や勝ち負けだけではない「コミュニティ」としてのスキーだ。久しぶりに気心の知れた仲間たちとのセッションを楽しんだ高井は、「やっぱり、みんなで滑るのが一番楽しい。年齢もスタイルもバラバラだけど、集まって滑ってる。それが一番だ」と語る。
このセッションの文化は、ブランド名である「Faction(仲間)」の体現にほかならない。FACTIONが毎年公開している映像作品でも、一人のプロライダーが突出した技術やスタイルを見せるのではなく、仲間同士で滑るチームとしてスキーの楽しさを重視して、発信し続けているのだ。
こうしたブランドのフィロソフィーを現場で共有し、支えあっているのが、10年来の付き合いがあるライダーたちだ。なかでも人生の半分以上の付き合いがある高野大輔の滑りやセンス、そして目利きを、高井は深く信頼している。
「あいつがカッコいいと思ったことは、間違いなくカッコいいでいいんじゃないかって、思っている」
と言い切る。その高野大輔はキーパーソンとして、全国各地で芽を出すライダーの発掘やサポートライダーの選出に奔走する日々だ。
