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自民党の政治とカネ問題の40年史…なぜ何度も繰り返されるのか? 元副総裁の山崎拓が指摘する自民党が変わらない理由

自民党の政治とカネ問題の40年史…なぜ何度も繰り返されるのか? 元副総裁の山崎拓が指摘する自民党が変わらない理由

北朝鮮との「たすきがけ承認」構想

田中角榮は共産主義から戦前に国粋主義に転じた田中清玄をパイプ役とする中東の石油利権にも、首を突っ込んでいた。一方、市場開放路線に乗った中曽根は英米外交に軸をおきながら、北朝鮮との国交回復交渉の絵も描いたようだ。

日本と北朝鮮、韓国と中国がそれぞれ国交を結ぶ「たすきがけ承認」外交である。北朝鮮と国交を結ぼうとした中曽根の狙いは何だったのか。

「中曽根さんがたすきがけ承認を提唱したときは、まだ田中角榮氏が倒れる前の田中曽根内閣時代でしたので、田中さんの影響も大きかったと思います。中曽根内閣の官房長官は後藤田正晴さんで、田中派の重鎮でしたから。

今の対イランと同じで、北朝鮮に核開発をやめさせようとしたのです。そのため、向こうに日本の大使館を置き、さらには米国とも国交を結んで大使を派遣しようとしました。

要するに、中曽根さんは外交によって北朝鮮の核開発を止めようとしたのですが、これは日本と北朝鮮だけの問題ではありません。なので、たすきがけ承認構想はこのあと中曽根さんから中国の曽慶紅国家副主席らに伝えられ、そのずっと後の小泉政権時代に六者協議になりました。六者とはアメリカ、中国、南北の朝鮮、ロシア、そして日本です」

田中支配から脱した中曽根は1987(昭和62)年11月、総裁候補に挙がっていた竹下登、安倍晋太郎、宮澤喜一の自民党ニューリーダー3人のうち、竹下を後継指名して政権を譲る。いわゆる「中曽根裁定」の結果だ。

これは竹下と金丸が経世会を発足させた直後でもあり、ここから中曽根の影響力が増したといえる。そうして金丸訪朝へとつながるという。

「このたすきがけ承認構想は小泉政権で拉致問題が発覚して立ち消えになりましたけれど、それまではずっと引き継がれてきました。中曽根さんのあとが竹下登政権で、90年の金丸訪朝もその流れで実現したものです。

言ってみれば、世界平和の実現のためにこうした大構想を描いて取り組んできた。それが中曽根さんでした。そのために世界平和研究所を創設しました。あれは竹下さんに資金を捻出させて設立したもので、今でも健在です」

事実、財団法人「世界平和研究所」は1988年6月、中曽根の後継指名により誕生した竹下登内閣の閣議了解を経て設立された。公益財団法人の導入に伴い、2018年1月に「中曽根康弘世界平和研究所」と名称を変えて今にいたっている。現在の会長は麻生太郎だ。ウエブサイトの沿革には次のように記されている。

〈創設者・初代会長中曽根康弘は、総理時代、日本には政治経済の調査や政策立案を行う有力な公益法人が少ないことを痛感し、外国の代表的な機関に遜色のない研究所の設立を決心しました〉

平たくいえば、竹下内閣は脱田中を目論む中曽根と竹下の合作で誕生し、竹下はそれゆえ首相退陣の花道として世界平和研究所を用意したのかもしれない。

安全保障と外交を自らの政治命題に定めた中曽根は、今の自民党にない世界的な視野で政治をおこなってきたのも事実であろうが、集団的自衛権行使容認を訴えるなど、自民党タカ派の支柱にもなってきた。

リクルート事件は“構造改革利権”の始まりだった

もっとも竹下政権は長続きせず、短命に終わった。原因は政治とカネ問題である。

平成の幕が開いたばかりの1989年2月、東京地検特捜部は前年から取り沙汰されていたリクルートグループ株を使った賄賂工作の本格捜査に乗り出した。リクルート事件が竹下政権を直撃し、この年の6月、首相の竹下は内閣総辞職に追い込まれる。

株式上場を前にした不動産業のリクルートコスモスの未公開株が、政官界のみならず経済界やマスコミにまで大掛かりにばら撒かれ、ロッキード事件以来の一大疑獄に発展したのである。

東京地検の最終ターゲットが中曽根とされ、中曽根政権で官房長官を務めた藤波孝生をはじめ、12人が逮捕されて有罪となった。

逮捕こそされていないが、コスモス株が渡った議員をざっと挙げると、中曽根本人のほか、竹下登や安倍晋太郎、宮澤喜一といったニューリーダー、渡辺美智雄や森喜朗、小沢一郎といった大物議員のオールキャストだった。

リクルート事件は未公開株の譲渡を新手の賄賂と見なした点が画期的だと評価されたが、構造的には従来の政治とカネを巡る汚職事件と変わらない。

ただし、旧来の贈収賄事件と異なる点もある。贈賄側のリクルート創業者の江副浩正は、中曽根が生み出した規制緩和という利権に食い込もうと電電公社から民営化されたNTTに接近した。ごく簡単にいえば、通信の自由化によって生まれたビジネスチャンスに目をつけ、賄賂攻勢をかけていたのである。

規制緩和、構造改革という見栄えのいい政策にも利権が発生し、営利企業がそこに食いつく。それは自然の流れでもあった。ビジネスの世界で新参者だった江副が新たな利権に一枚噛もうとして賄賂を使った。それがリクルート事件の本質ではないだろうか。

そして、この政治とカネ問題は現在もなお尾を引き、ほとんど解決できていない。未公開株は自民党の派閥領袖クラスや野党幹部にも行きわたり、ロッキード事件以来の衝撃が政界に走り、自民党は政治改革大綱なる改革案をまとめた。そこで自民党は派閥の解消を目指した。だが、なし崩しになる。

リクルート事件の摘発から30年以上経た2022年11月、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の報道から火のついた派閥の裏金問題もまた、高市早苗政権の今なお燻り続けている。まさしく歴史は繰り返してきたといえる。

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