私たちがラグジュアリに惹かれる最大の理由
カプフェレ教授は、ラグジュアリ・マーケティングには「逆張り」の法則があるといいます。
「ちょっといいものを売る」プレミアム・ブランドが「どうやったら売れるか」を考えるのに対して、ラグジュアリ・ブランドは「どうやったら売れすぎないか」を考えます。
たとえば、「ポジショニング(競合との違いを明確化)」を忘れろ、顧客の声にいちいち応えるな、熱狂的なファン以外は切り捨てろ、広告の目的は「売る」ことじゃなくて「語る」こと、値段はむしろ高そうに見えた方がいい、時間が経つごとに値段を上げろ、スタータレントに頼った広告を出すな、ブランドのルーツを守れ――。
普通のビジネスとは真逆の戦略が並びます。
ラグジュアリ・ブランドが「売れるから」といってラインを増やしすぎると、特別感が失われてしまいます。
ブランドの拡張は一時的な利益をもたらしますが、ラグジュアリとしての本質――つまり、「距離感」「届かなさ」「選ばれし者の世界」といった特別感が薄まってしまいます。
カプフェレ教授が教えてくれるのは、ラグジュアリは単なる高級品ではなくて、ある種の選民性や物語性を持った存在だということです。
そして、そういう「遠さ」や「例外性」こそが、私たちがラグジュアリに惹かれる最大の理由なのかもしれません。
文/坂出 健
『贅沢と欲望の経営史 あなたはなぜ今日もスタバに行ってしまうのか』 (光文社新書)
坂出 健
2026/4/151,100円(税込)272ページISBN: 978-4334109486あなたはなぜ割高でも、”実存のドトール”より”演出のスタバ”に行くのか? その秘密はコーヒーの味ではなく、現代資本主義社会という巨大劇場の構造と、そこで踊らされる私たちの欲望にある。砂糖やコーヒーから始まった「贅沢品」(ラグジュアリ)を、ダイアモンドの独占供給、エルメスやLVMHのプレミアム戦略、ユニクロやザラのマーケティングから「7つの大罪」を満たすGAFAまでを1本の線で繋げ、世界を回す贅沢品の本質に迫る。

