・気づかずにごめん
服飾雑誌を見ていて思い出した。そういえば親父のお下がりのベルベットのジャケット、あれも仕立てたものだったはず。秋になるとこれに袖を通すのが楽しみで、持ち合わせた服の中でも1、2を争うほど気に入っている。
これを譲り受けたのは、私が25歳の頃だったと思う。親父が会社を潰して、借りていた倉庫を明け渡さないといけなかった際、荷物の搬出を手伝っていたときに出てきたものだった。いつ購入したものか知らないが、すでに体型が変わっていて親父は着ることができなかった。だから私がもらったのである。
オーダーメイドに間違いない。胸元に「佐藤」の刺しゅうが入っているから。
もしかして良いものだったんじゃないのか? 今まで1度も調べたことがなかったけど、タグはまだついているから何かわかるかも。内側の胸ポケットの下には「excellent Hemingway E.X.」。
これは購入したブランドが展開するラインの名称らしい。作家アーネスト・ヘミングウェイを象徴として掲げた、骨太でクラシックな高級ラインであったことが考えられる。
逆側には「niedieck brilliant velvet」。ドイツの歴史ある名門テキスタイルメーカー「Niedieck」のベルベット(別珍)であることを意味している。
「brilliant velvet」とある通り、極上の光沢感と滑らかさを持ち、圧倒的な耐久性で何十年経っても美しい毛並みと立体感が損なわれない特徴を持っていた。
そんな良いものを仕立ててくれていたなんて、全然気づかなかったよ。奇しくも昨年6月に他界してから1年。良いものを遺してくれてたのに、気づかずにごめん。今になってこのジャケットの価値に気づくとはね。
話がずいぶん逸れてしまったけど、四の市にはいろいろな掘り出し物が眠っている。私が掘り当てた服飾雑誌のように、出会う商品を通じて思わぬ発見があるかも。何より、お得商品も多いので、4の付く日に巣鴨を訪ねてみてはいかがだろうか?
参考リンク:Instagram @sugamo_flea_market、オーダースーツ注文紳士服アベ
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
