いい店だから、の意味
黙っている私を見て、彼はさらに続けました。
「なんで怒ってるの?別に今会ってるわけじゃないし」
私が、好きな人と特別な時間を過ごしたかっただけだと伝えると、彼は心底わからないという顔で言ったのです。
「誰と来ても同じだろ。いい店はいい店なんだから」
その言葉で、私はようやく腑に落ちました。彼にとっては、向かい合う相手は替えのきくものでしかなかったのだと。込み上げてきたのは怒りよりも、すっと冷めていく感覚でした。
そして...
私はグラスを置いて、まっすぐ彼の目を見て言いました。
「うん、いい店はいい店。だったら私も、相手はあなたじゃなくていい。誰と来ても同じなんでしょ?」
彼がぽかんと固まっているうちに、私は伝票を彼の前に置いて席を立ちました。そのまま振り返らずに、お店を出たのです。街を歩きながら、不思議と清々しい気持ちでいっぱいでした。
彼は最後まで、自分の何がいけなかったのか、わからない顔をしていました。けれど、その理由をわざわざ教えてあげる義理は、もうありません。誰かの思い出をなぞるだけの時間は、私にはもう必要ないのですから。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
