同じだと思っていた
黙り込む彼女に、俺はつい本音をぶつけてしまいました。
「なんで怒ってるの?別に今会ってるわけじゃないし」
それでも彼女は、好きな人と特別な時間を過ごしたかっただけだと言います。その感覚が、俺にはどうしてもわかりませんでした。だからこう返したのです。
「誰と来ても同じだろ。いい店はいい店なんだから」
すると彼女は、まっすぐ俺の目を見て言いました。
「うん、いい店はいい店。だったら私も、相手はあなたじゃなくていい。誰と来ても同じなんでしょ?」
伝票を俺の前に置いて席を立つ彼女を、俺はただ見ているだけでした。
そして...
一人になった店で、俺は彼女の言葉を何度も思い返しました。店を「便利な情報」としてしか見ていなかった俺と、隣に誰がいるかですべてが変わると知っていた彼女。同じ料理を前にしても、二人が見ていたものはまるで違ったのです。
彼女にとっての特別を、俺は「いい店」というひとことで踏みつけていました。誰とでも取り替えのきく場所ではなく、その人とだけの時間を選べる人になりたい。彼女が残したあの一言の意味にようやく追いついたのは、もう取り返しのつかなくなった後でした。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
