宮崎弁による濃密な会話劇で注目を集めてきた劇団『小松台東』の主宰・松本哲也による新作書き下ろし作品『惰性クラブ』が、6月8日(月)~28日(日)の期間で東京グローブ座で上演中です。大阪公演は7月3日(金)〜5日(日)、梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで行われます。公演前日の6月7日(日)に行われたゲネプロと、主演のTravis Japan・川島如恵留や、とろサーモン・村田秀亮らキャスト陣の囲み取材の模様をお届けします。

田舎の倉庫で繰り広げられる“惰性”の時間
この作品で描かれるのは、「なんとなく続いている関係」と「理由はないけれど集まってしまう場所」。夢を語るわけでもない、かといって夢を諦めきれるわけでもない若者たちの“惰性”の時間。その静かな日常に差し込む小さな揺らぎが観る者の胸をじわりと締めつけるような、濃密な空気感の会話劇が展開されます。
作・演出の松本と初タッグとなるTravis Japan・川島が演じるのは、一度は夢を抱いて東京へ出たものの、志半ばで挫折し地元へと戻ってきた⻘年・山崎直哉。これまでとはひと味違う舞台に挑戦し、等身大の葛藤を抱えた複雑な役どころを繊細に体現します。
舞台は、とある田舎の倉庫。そこでは、サッカーで一度、挫折した直哉を始め、倉庫の持ち主である順平(広田亮平)や転校してきた梨奈(金澤美穂)、留年して直哉らと同級生になった和希(富田健太郎)など、高校時代から自然と集まってくる仲間が、卒業後も変わらず、何をするわけでもなく、ただただ“惰性”の時間を過ごしています。

そこに突如、湧いて出た不審な男のウワサ。さらに、東京で就職した仲間・雄太(見津賢)が彼女の汐音(瑞生桜子)を連れてやってきて──。そんな、ふとした日常の変化が直哉たちの心に小さな風を吹かせます。
彼らを時には厳しく、でも本当は温かく見守る先輩・菅原(村田秀亮)や、不器用ながらも直哉を優しく見守る父・紀男(中村まこと)など、彼らのまわりにいる大人たちも個性豊かな面々ばかり。
何かやりたい、でも何をどうすればいいのかわからない──。そんな、きっと誰の心の中にもあるもどかしさが丁寧に描かれた本作は、観ている私たちの物語でもあると感じられるからこそ、胸に刺さるものがありました。
「一歩踏み出そう」と思ってもらえたら
初日を翌日に控えた6月7日(日)のゲネプロ直前、作・演出を務める松本哲也と、出演者の川島如恵留、中村まこと、村田秀亮、那須佐代子が囲み取材に応じました。

自身の20代のころの体験をベースに本作を書いたという松本。作品に込めた思いについて、こう語ります。
「僕が20代のころはうだつの上がらない生活をして、毎日テレビゲームばかりしていて、自分が何をしたいのか、やりたいことが見つけられない20代だったんですけど、そういう人たちはたくさんいると思います。そんな人たちがこの舞台を観て、如恵留くん演じる直哉という人物を通して、一歩踏み出そうと思っていただけたらと思います。小さな一歩かもしれないけれど、それは大きな一歩につながるんだよ、ということを伝えられたらいいなと思っています」
川島は、自身の演じる直哉に共感したところを聞かれると「仲間に恵まれているところ」と答え、「1人じゃないからこそ踏み出せた一歩があると感じますし、挫折をしたとしても、まわりに大切な仲間がいると再起しようという気持ちになれる」と、その思いを明かします。

また、体調不良のため一時活動を休止していた自身の経験を振り返り、「実は今日(6月7日)は、僕が昨年、Travis Japanに復帰したコンサートの日でもあるんです。ちょうど1年になりますが、改めて僕自身、Travis Japanでいられることに心から感謝していますし、本当にいい仲間に恵まれて、いままたこうしてステージに立てていることを実感しています。そんな経験があったからこそ、直哉が仲間に恵まれて、また一歩を踏み出すという舞台をお届けできているんだと思います」と感慨深げに語りました。