みんなが知っている、あの味
そのお店のプリンは、いつも長い行列ができることで知られています。遠方にある上に、すぐ売り切れてしまうので、私には縁のないものでした。
友人と集まるたびに、誰かがあのプリンの話をします。「あの食感がたまらない」と盛り上がる輪の中で、私だけが相槌を打つしかありませんでした。一度でいいから味わってみたい。その思いを、ずっと胸の奥にしまっていたのです。
軽い気持ちで送ったメッセージ
息子たちが近くへ行くと聞いて、私は家族のグループチャットに頼みました。
「行列に並んで買ってきて」「あのお店の季節限定プリン、ずっと気になってたの」
嫁から「駅前で買える名物のおまんじゅうではダメでしょうか」と返事がありました。それでも私は、「あのお店のじゃないと意味がないの」と引きませんでした。旅行のついでに寄ってもらうくらい、大したことではないと思い込んでいたのです。
