エリートの空気は変わった
フォーラムの招待者限定の朝食会では、いつもは沈黙する財界の大物が本音をこう漏らした。
投資会社「イオン」創業者ロマン・トロツェンコは「古い経済モデルは機能しなくなり、エンジンは停止した」と断じ、出生率が過去200年で最低に落ちたことと動員による労働力流出を挙げた。
歴史的に世界で最も儲かる鉄鋼会社の一つだったセヴェルスタリの会長アレクセイ・モルダショフは、投資を24%削り、すでに「マイナスのキャッシュフロー」に陥っていると明かした。軍需に利益を吸い尽くされ、民間の屋台骨が軋んでいる。
エリートの空気は変わった。ウクラインスカ・プラウダ紙の5月24日付報道によれば、政権中枢に近い人物は、2026年に入り、何らかのカタストロフィーが迫っているという感覚が強まった、と語る。
彼らは問題が悪化していることを内心で認めながら、代替案を持たず、ただ下降トレンドを見つめている。「夕食の席では誰もがインターネット規制の話ばかりだ。我々は北朝鮮に近づきつつある」という呟きが、その閉塞を象徴している。
戦場で勝てず、身内を叩き、経済を痩せさせ、それでもなお誇大妄想だけが膨らんでいく。サンクトペテルブルクの黒煙は、その姿そのものだった。プーチンが「戦争は終わりに近づいている」と語るとき、自分の崩壊が近づいていることに、プーチンがただ一人気づいていないだけである。
文/小倉健一 写真/shutterstock

