最も濃い「菌類の森」はどこに?
今回の研究で意外だったのは、菌類ネットワークが最も高密度に存在する場所です。
多くの人は、地上の生命が豊かな熱帯雨林の地下こそ、菌類も最も濃く広がっていると想像するかもしれません。
しかしチームの予測では、AM菌ネットワークの密度が特に高かったのは、草原、ステップ、冠水草原、湿地などでした。
たとえば、南スーダンのスッド湿地、米フロリダ州のエバーグレーズ、チベット高原などでは、非常に高い菌糸密度が予測されています。
世界全体のAM菌バイオマスの約40%は、こうした草原生態系に集中しているとされています。
これは、地下の世界を見る目を大きく変える発見です。
地上に大きな木がそびえる森だけが、重要な生態系というわけではありません。
一見すると単調に見える草原の地下にも、地球規模の炭素と栄養の流れを支える「菌類の森」が存在していたのです。
一方で、懸念される結果も示されました。
大規模な農地では、AM菌ネットワークの密度が野生生態系に比べて、およそ半分低いと予測されたのです。
チームは、殺菌剤、リンや窒素を含む肥料、耕起などの農業慣行が関係している可能性を指摘しています。
ただし、この研究だけで「どの農業行為が最大の原因か」を特定したわけではありません。
ここは重要な注意点です。
農地で菌糸密度が低いことは示されましたが、その原因を1つに絞るには、さらに研究が必要です。
【菌根ネットワークのイメージ画像がこちら】
また、今回の地図は全地球を直接測定したものではなく、既存の土壌データと機械学習による推定を組み合わせたものです。
熱帯雨林、砂漠、ツンドラなど、まだサンプルが不足している地域もあります。
さらに、AM菌が植物から土壌へ炭素を運んでいるからといって、その炭素がすべて長期的に固定されるわけではありません。
菌糸がどれくらいの速度で成長し、死に、どれだけ安定した土壌炭素になるのかは、今後さらに調べる必要があります。
それでも今回の研究は、これまで見えなかった地下の生命インフラを、初めて地球規模で可視化した重要な一歩です。
地球環境を考えるとき、私たちは森や海、大気ばかりに目を向けがちです。
しかし本当は、私たちの足元の数センチの土の中にも、地球の生命を支える巨大なネットワークが広がっているのです。
参考文献
Hidden Web of Fungus Inside Earth Could Reach The Sun a Billion Times
https://www.sciencealert.com/hidden-web-of-fungus-inside-earth-could-reach-the-sun-a-billion-times
Earth’s underground fungal network is so massive, it would span 10% of the Milky Way, map reveals
https://www.livescience.com/planet-earth/plants/earths-underground-fungal-network-is-so-massive-it-would-span-10-percent-of-the-milky-way-map-reveals
元論文
Global density and biomass of arbuscular mycorrhizal fungal networks
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adu4373
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

