お揃いを、片方にした意味
それから、彼女がどこかよそよそしくなった気がしていました。理由がわからないまま、職場でマグを手にするたびに、あの曇った表情が浮かびます。そこでようやく、気づいたのです。
二人で選んだお揃いを、俺は黙って片方だけ持ち出した。彼女にとってそれは、ただの食器が一つ減ったのではなく、二人の何かが欠けたように見えたのかもしれない。お守りにするくらい彼女を想っていたはずなのに、その想いが、まるで逆の意味で伝わっていたのです。
そして...
帰ったら、ちゃんと話そうと決めました。マグを職場に持っていった本当の理由を。照れくさくても、ごまかしの一言でやり過ごしてはいけなかったのだと、今でははっきりわかります。お守りのつもりが、彼女を不安にさせていた。お揃いは、片方だけ大事にしても意味がないのだと、紺色のマグが教えてくれた気がします。
次の休みには、二つのマグでコーヒーを淹れて、あらためてあの時間を彼女と分かち合おうと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
