訃報で感じた“反省”の気持ち「偏見が少しでもなくなれば」
――マイケルが音楽を通して届けたかった信念や思いは、なんだったのでしょう?
「愛」や「平和」を音楽にのせて世界に届けたい、といった本気の思いです。それは彼の生き方や人生そのものだった。恵まれない子どもや人々へ、ものすごい数の慈善活動をしています。
それは『ウィ・アー・ザ・ワールド』など数々の曲でも表れていますが、「スターだから社会貢献する」という姿勢とは全く違っていて、彼自身の切実な叫びだったように思います。
――そのような姿勢は映画『THIS IS IT』の中でも多く見受けられましたよね。
自分自身が年を重ねていくにつれて、「なんでこんなに純真でいられるんだろう」って彼を見てすごく考えるようになりました。『THIS IS IT』の中でもマイケルがダンサーやスタッフに「この数年で環境問題を改善しよう!」って呼び掛けるシーンがすごい印象的で…。
「一人一人の力で世界は変えられるんだ」って本気で信じていた人で、それを自分の音楽で証明しようとしていた。今回の映画でもそれを実感したし、その純真さが常にあったからこそ、マイケルの表現は、国も世代も時代も選ばないで人々の心に届き続けるんだと思います。
――長年のマイケルファンだった高橋さんですが、2009年にマイケルの訃報を聞いたときは、率直にどんなお気持ちでしたか?
一番強く感じたのは、「反省」に近い気持ちです。素晴らしい功績を収めたマイケルも、人生の晩年はゴシップの肥やしにされていた。マスコミにあることないこと書かれて、やることなすこと叩かれて、裁判で無罪を勝ち取っても、彼を取り巻く状況は変わらなかった。
世界中でマイケルにまつわるトピックがバラバラに切り取られ、おもしろおかしく消費され、マイケル・ジャクソンという人物像そのものがぐちゃぐちゃになっていき、彼の表現者としての本質が、おざなりになっていった。
もちろん僕はマイケルの大ファンでしたけど、音楽ジャーナリストとして働く中で、「そこに加担してしまったのでは…」という気持ちがあるんです。だからこそ今回の映画で、マイケルを取り巻く偏見が少しでも解消されればいいなと思っています。
――改めて、映画『Michael』の注目ポイントを教えてください。
注目は、キャスティングです。大人になったマイケルを演じるのは実の甥っ子のジャファー・ジャクソンです。彼は歌手としてシングルを出していますが、俳優としては素人に等しかった。それを2年間でよくここまで近づけたなと…。
しかも声と優しそうな目がマイケルそっくりなんです。音楽伝記映画はキャスティングが命ですから、相当な重圧の中、並大抵ではない努力をされたと思います。
――2026年の今、マイケルに注目する意義をどう感じていますか?
僕らがスターという存在をどう祭り上げて消費していったのか、SNS時代の今だからこそ、見つめ直す必要があるんじゃないでしょうか。そしてグラミー賞の体質も含め、彼が投げかけてきた業界における人種の不平等の問題も、完全に解決したとは言いがたい。だからこそ、彼の偉業を振り返りながら、今を測り直すような意味でこの映画を観ていただきたいですね。
取材・文/木下未希

