賢い選択をしたつもりだった
彼女が自販機の前で立ち止まったとき、俺はもったいないと感じました。
「それ買うなら、ファミレス行こうよ」「ドリンクバーなら何杯でも飲めるし」
すぐ近くの店を指さして、俺はそう提案しました。
「自販機の一本なんて、もったいないって」
俺の実家は、何でも長く大事に使う家でした。お金は賢く使うものだと、ずっとそう教わって育ったのです。だから百五十円を出すより、二人でドリンクバーを頼むほうが、誰が見ても得だと信じていました。
元を取る喜び
店に入ると、俺は迷わずドリンクバーへ向かいました。コーラ、メロンソーダ、コーヒー。一杯ごとに、払った金額の元が取れていく感覚が、たまらなく心地よいのです。三杯目を掲げて、俺は思わず指を折りました。
「元は取らないと、損だろ」
こうして賢く得をするのは、俺にとって小さな達成感でした。彼女にも同じ気持ちを味わってほしくて、何度もおかわりを勧めました。けれど彼女は、グラスを片手に乗ってきません。
遠慮しているのだろうと、俺はそのときまだ思っていました。
