動けるのか? 鎧体験がもたらす解像度と実感
私が思い描く西洋の鎧といえば、丸みのあるきれいなラインと、つるりとした金属の質感です。それだけに固そうで、重そうで。それで動くのは…そもそも着るのすら大変なイメージです。作者さんはご自身の体力について「湿った石の裏にいるタイプのおたく」と書かれています。日頃、隙あらばごろごろしたい私もその感じに大変共感するところなのですが、そんな作者さんも、会のみなさんの力を借りてメットのサイズを選び、鎧を着こみ、打ち合いの体験までこなされています。
ご本の内容は体験マニュアルではありません。ですが、参加のきっかけから終わりまでが順序立ててテンポよく語られ、練習会の全体像と共に、盾や剣の構え方では思うように体が動かない大変さ、おしゃれなメットをつけてみたいけれどサイズが合わないといった出来事を素直に楽しく追うことができます。
動きにくいのではと思っていた鎧ですが、「地面に落としたスマホを拾えます」と身近で具体的な描写がされ、作者さんがその身で得た西洋鎧への実感が読者である私にも解像度高く伝わって、「自分が強まるの……楽しー!」という作者さんの気持ちにうれしくなってきました。
日常に無いものを日常にすり合わせる。実体験を糧にする力
鎧は今の日本では日常的に身につけるものではありません。このご本では、作者さんも、練習会の方々も、鎧をまとうことが非日常であるという点にとても心を砕いておられるのが伝わってきます。硬質の武器や防具を用いる活動だからこそ、周囲の方々に迷惑や不安を与えないようルールを定めて動き、作者さんも含め、準備運動や鎧選びの際も無理せず、できるなら進めていくという様子がうかがえます。
その日一日だけをクリアすればいいのではなく、明日も現代社会で生きていく身でありながら、非日常の体験を自分の中に刻み、糧にしていく、すり合わせと、体験で好きを高める面白さを感じました。

