ベランダにいた彼の背中
数日後、ふと窓の外に目をやると、彼がベランダの隅にしゃがみ込んでいました。オリーブの鉢に水をやり、茶色くなった葉を一枚ずつ確かめるように指でなぞっています。私が見ているとは気づいていない様子でした。その手つきは、面倒なものを押しやった人のものではありませんでした。よく見ると、枝の先に小さな新しい芽がひとつ、顔を出していたのです。彼は冷たいわけではないのかもしれない。そう思う一方で、それならどうして何も話してくれないのだろうと、新しい問いが残りました。
そして...
その後、彼にベランダへ呼ばれました。隣に並ぶと、彼は芽を指さしてこう言いました。「前の場所だと、葉っぱが焼けてたんだ。こっちのほうが元気になると思って」。彼なりに、二人の鉢を守ろうとしていたのだと、ようやくわかりました。彼は気持ちを言葉にするのが得意ではなくて、私はそれを察するのが苦手だったのだと思います。これからは、隅に置かれた小さな変化にも、お互いにちゃんと声をかけていきたい。新しい芽に水をやりながら、そんなふうに思えたのです。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
