「来年春」というタイミングは首相にとっても都合が悪い
先に触れたように、高市首相は1月の記者会見で「物価高に苦しむ中・低所得の皆様の負担を減らす」としていたものの、このタイミングで消費税減税を実施し、国民民主党が唱えるような対策を講じなければ、物価や金利上昇によって国民の負担がかえって増大するかもしれないのだ。
消費税減税について、首相は「給付付き税額控除を実施するまでの2年間」に限定した策であると言っているが、実施のタイミングを見誤れば国民生活にとって良いことだらけとはならないはずだ。
あえて付け加えれば、「来年春」からの減税実施というタイミングは首相にとっても都合が悪いと言える。
食料品の消費税率「1%」案については、中道改革連合や国民民主党などが反対・慎重であると記したが、首相にはもう1つの「悲願」があるためだ。それは、自民党の党是でもある「憲法改正」である。
高市首相は4月の自民党大会で「立党から70年、時は来た。国会で議論を進めていこう」と呼びかけ、憲法改正の発議について2027年春までにメドをつけたい意向を示した。
だが、自民党は改憲を発議できる条件となる衆院で3分の2以上の議席を得たが、参院は連立政権を組む日本維新の会の議席を足しても過半数割れしている。
消費税減税をめぐる国民民主党とのスタンスの違いが障壁
そのため、自民党の麻生太郎副総裁や萩生田光一幹事長代行らは「政策的にも非常に近い」と国民民主党に連立入りを含めた秋波を送っている。
改憲をにらんだ布石を打ち始めているわけだが、ここで消費税減税をめぐる国民民主党とのスタンスの違いが障壁となる。
加えて、高市首相は鈴木俊一幹事長に衆院の議員定数削減をめぐり比例代表のみ45議席削減する案で意見集約を図るよう指示したが、この案に対しては国民民主党の玉木代表が「自民、維新に有利な中身で出してくるということであれば、我が党のみならず他の野党もなかなか『はい、そうですか』とはならない」と否定的だ。
消費税減税と議員定数削減という「2つの壁」を取り除かない限り、連立入りを含めた交渉は実を結ばないだろう。
すなわち、それは首相の「悲願」である憲法改正は遠のくということだ。ただ、高市首相は消費税減税をめぐり従来の発言を二転三転させてきた。
「つなぎとして消費税減税を行う必要はないのではないか」と修正が入るのか
仮に、改憲や連立入りに関して国民民主党の理解を得られる可能性があれば、今秋の臨時国会で関連法案を審議する際にさらなる「妥協」をすることも考えられる。逆に言えば、国民民主党は自らの政策や主張を採り入れてもらえる絶好のチャンスを迎える。
玉木代表が言うように「住民税の減税と社会保険料還付の組み合わせがベスト」となるのか、古川税制調査会長が指摘している通り「つなぎとして消費税減税を行う必要はないのではないか」と修正が入るのか。
まだまだ食料品の消費税率をめぐる先行きは不透明と言えるのではないか。いずれにしても、日銀の利上げ見込みや金利上昇、物価高は国民生活に直結する。高市首相には「ブレる」ことなく、生活を守り抜いてもらいたい。
文/竹橋大吉

