北海道で赤い羽根共同募金を実施する社会福祉法人「北海道共同募金会」の会計責任者が募金を横領し、被害額が1億8000万円に達する可能性があることがわかった。共同募金に不信を抱かせる裏切りの結果、北海道内では募金を原資にした福祉事業への助成額が当面半減することになった。今後の募金集めにも影響が出る懸念が強まっている。
「外部の会計士の監査を毎年行なっていましたが…」
「赤い羽根共同募金の信頼を根底から揺るがした。今後の活動にも地域も含めて大きな影響を及ぼすという風に考えてます」
15日、札幌市での記者会見で北海道共同募金会の瀬尾英生会長は問題の深刻さを隠そうとしなかった。
地域の福祉活動を続けるためにも、赤い羽根共同募金の存在は「特に人口減少する北海道においては非常に大事」と言及。財政力が弱い自治体が多い北海道において、地域の福祉に打撃を与えかねない不祥事に対して謝罪を繰り返した。
2月17日、札幌国税局が同会の男性事務局長A氏(58)に対し、所得税違反容疑で同会事務所に査察に入ったことで事態が動き始めた。
これを機に募金会は預金口座の残高が少ないことに気づき、調査を依頼された弁護士が、2020年以降A氏が会から自分が管理する口座に送金する手口などで金を持ち出していたことを確認した。
「外部の会計士の監査を毎年行なっていましたが不正は判明しませんでした。
原因として、事務局長が年度末に取引業者から一時的に金銭を借り入れて(流用分を穴埋めし)、決算を越えた後に(また金を引き出して取引業者に)返済する処理がなされていたことや、理事会の承認のない議事録を作成して金融機関から相当額の借り入れを行なっていたことが確認できています。
これらの行為で不足金を意識的に補っていたと考えられます」(調査した後藤雄則弁護士)
こうして隠してきた横領容疑。それが今回明るみに出たのは、A氏が多額の裏金収入を得ているとの情報をつかんだ国税が強制捜査に入り、A氏が過去に繰り返してきた「年度末の隠蔽工作」ができなくなったためとみられている。
A氏はプロパー職員「通帳から印鑑まで全般の管理が可能だった」
6年近く金の抜き出しに気づけなかった結果は甚大で、同会の財政は火の車になっている。
天羽啓常務理事の説明では、2025年度に道内の募金額は約6億7000万円あり、うち約1億4000万円は25年度中に助成金で配布されている。
残る約5億3000万円のうち約3億4000万円は今年度に福祉・支援団体へ助成し、約1億9000万円は同会と道内に179ある共同募金委員会の事業費に充てる計画だった。
ところがここから約1億8000万円が足りないことが年度末になって発覚したのだ。瀬尾会長は、
「事務費の削減や取り崩せる積立金などを検討し今年度実施される福祉事業への助成として当初予定していた額のうち約5割の交付を早急に行う予定です」
と説明。懲戒解雇と刑事告訴を検討するA氏に対しては、損害賠償を求める考えを明らかにした。だが着服分を回収し、残る半分の助成を行える展望はない。
そもそもなぜこのような巨額の不正会計が可能だったのか。
A氏は1991年に同会に入ったプロパー職員で、2010年に事務局次長になったころから事実上会計を一人で担い、2022年に事務局長に昇格した。「会計責任者という立場で、通帳から印鑑まで全般の管理が可能だった」(天羽常務理事)という。
支出は会計責任者の了承が必要だとする経理規定があるものの、
「会計責任者が当該人物(A氏)だということもあり本来の手続きが形骸化していた」
と天羽常務理事は話す。チェック機能はなかったに等しい。
A氏は問題発覚後、「申し訳ないことをした」「いずれちゃんとお詫びをしたい」と口にするいっぽう、弁護士を代理人につけ、募金会の事情聴取の求めには「刑事事件に関わる」として応じていないという。
不正会計を見抜けなかった会計士も問題発覚後の4月に辞任。募金会は不正の経緯を自力で検証することもできない状況だ。

