海の次は、陸を断つ…ウクライナ戦略の核心
逆にウクライナは海域の60%以上で作戦のテンポを握る。黒海艦隊の戦闘能力はおよそ30%が失われ、12隻あった揚陸艦のうち7隻が破壊か長期修理に追い込まれた。
揚陸艦が動かないということは、南ウクライナで水陸両用の上陸作戦を仕掛ける能力が消えたということだ。プーチンが海から圧力をかけるはずだった艦隊は、自らの生き残りで手一杯になっている。
興味深いのは、ウクライナがこれを正規の海軍力でやってのけたわけではない、という点だ。彼らは敵艦を一隻残らず沈めようとはしていない。狙いは艦隊を「使い物にならなくする」ことに絞られている。
大艦隊を持たない国が、安価な無人艇と長距離ミサイルの組み合わせだけで、ロシアが自国の庭と見なしていた海から追い出した。海戦の歴史において、これほど鮮やかな非対称の逆転は前例がない。
海の次は、陸を断つ。ここにウクライナ戦略の核心がある。
少数のチョークポイントに半島の運命がぶら下がる
クリミアは巨大な兵站基地だが、外と繋がる補給線は驚くほど細い。北はペレコープ地峡という幅5~7キロの帯、東はケルチ海峡。この少数のチョークポイントに半島の運命がぶら下がっている。ウクライナはこの急所を一つずつ潰しにかかった。
アルミアンスク近郊の道路橋、ヘニチェスク海峡の橋、チョンガル橋、ヴォインカの橋——いずれも精密攻撃を受け、大型トラックや軍用重機が通れなくなっている。ロシア軍は干上がった運河の上に急ごしらえの迂回路を作らされ、それすらも次の標的にされる。
そして2026年6月、決定打が放たれた。21日、ウクライナの長距離無人機と特殊部隊が、ケルチ海峡を挟む両岸——ロシア側のカフカース港のフェリーと、クリミア側ケルチの石油ターミナル——を同時に叩いた。
少なくとも3隻のフェリーが炎上し、海峡のフェリー輸送は完全に止まった。ゼレンスキーはこれを、ロシアのエネルギーインフラに対する「長距離制裁」と呼んだ。
この一撃により、クリミアは併合以来最悪の燃料危機に陥ることとなった。
ロシアが任命した行政トップ、アクショノフは、政府機能を守るために一般市民へのガソリン販売を無期限で全面停止すると発表した。停止前から燃料はクーポン制で週20リットルに制限され、市民は給油のために何時間も列をなしていた。

