闇市場の価格は2倍に跳ね上がり…
闇市場におけるガソリン価格は2倍に跳ね上がり、半島を訪れていたロシア人観光客は帰りの燃料を確保できずに立ち往生し、当局が専用ホットラインを開設する始末である。
こうした経緯によりロシア指導部は逃げ場のないジレンマを抱えることになった。
前線の部隊に送る軍用燃料を優先すれば、市民生活が干上がる。市民を救えば、前線が枯れる。どちらを取っても痛みが残る二律背反を、ウクライナの中距離打撃が突きつけ続けている。
プーチンが「ウクライナを締め上げる」ために併合した土地で、今や締め上げられているのはロシア自身なのだ。クレムリンが異例にも燃料不足の深刻さを公に認め、早期解決を約束したこと自体が、事態の制御不能ぶりを物語っている。
ウクライナによる攻勢を支えているのが、西側が供与した長距離精密兵器と、その運用の巧みさだ。
2025年11月以降、米英仏はウクライナが強力な兵器をロシア領内に使うことを段階的に認めた。これによりウクライナは、米国製ATACMSと英仏のStorm Shadowで、クリミアの防空網と指揮所をシステムとして解体しにかかっている。
5月の攻撃ではS-400の中核レーダー「92N6」が破壊され、6月21日にはさらに4基のS-400レーダーと2基のパーンツィリが潰された。防空の傘に穴が空けば、後から来る安価な自爆ドローンの命中率が跳ね上がる。
パルチザン組織「ATESH」の暗躍
そして外からの攻撃だけではない。占領地の内側にも火が放たれている。ウクライナ人とクリミア・タタール人によるパルチザン組織「ATESH」——タタール語で「火」を意味する——は、占領地に最大2,000人のエージェントを抱える諜報・破壊網へと育った。
彼らは長距離攻撃の「目」として標的情報を送り込むだけではない。「ブント」という名のチャンネルを通じて、突撃を拒みたいロシア兵に装備の壊し方まで教えている。
燃料タンクに生卵や砂糖を混ぜてエンジンを潰す——黒海艦隊の第126旅団では、この手口で水上オートバイやゴムボートが次々と「原因不明の故障」を起こし、調査委員会が派遣される騒ぎにまでなった。ロシアの兵士たちは故障を口実に死地への突撃を回避したのである。
ここまで来ると、将校たちの心も折れ始める。ATESHの情報によれば、黒海艦隊に残る指揮官たちは正式な命令を待たず、家族や運べる財産をこっそり本土へ移し始めているという。司令部の本土撤退は、前線の兵に対する何よりの士気崩壊の合図だ。

