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野菜嫌いの子どもがキャベツに夢中。富山発「アグリスポーツ合宿」のハッとする効果

野菜嫌いの子どもがキャベツに夢中。富山発「アグリスポーツ合宿」のハッとする効果

ただのキャベツも自分で収穫すればこの上ないご馳走に

地域の銭湯で汗を流したあとの食事はまた格別

日本アグリスポーツ協会の立ち上げのきっかけは、子どもが野菜を食べないという親御さんの嘆きにあったが、このアグリスポーツ合宿での食事のシーンで、西村氏は驚くべき効果を目にすることになる。

「その日はキャベツの収穫をして、昼食はおにぎりと、獲ったばかりのキャベツをそのまま切っただけのサラダでした。身体を動かしてお腹もすいていたし喉も渇いていたのでしょう。美味しい、美味しいとずっと食べている子どもの姿を見て、『こんなに自分から野菜を食べるのを見たことがない』と親御さんが驚いていました。目の前のキャベツ畑から、自分で収穫し、食べてみたら、こんなに美味しいものはない。そんな体験はお金では買えません。その感動が、もしかしたら将来、自分もキャベツを作ってみようかなというきっかけになってくれたら、うれしいなと思います」

たとえば、米の収穫は通常1年に1回。世の中は“タイパ”の時代と言っても、農作物の成長サイクルは変えられない。ものや情報が溢れ、デジタル化によって何もかもがスピーディになる状況に“待った”をかけるのが農業ではないかと、西村氏は言う。

「農作業をしていると、時間の流れがゆっくりになります。土に触れ、作物の匂いを嗅ぐなどして五感が鍛えられると、騒いでいた子どもたちも落ち着きを取り戻していくのです。身体を動かし、身体が必要としているものを食べるというのは人間の根源的な行為なので、精神に与える影響も大きいのだと思います。親御さんたちもその効果を知って、家にいてゲームやスマホにかじりついているよりよっぽど良いと、子どもを連れてきますよ」

アスリートから高齢者まで、様々な可能性に満ちたアグリスポーツ

昼間汗を流した畑が、夜のキャンプファイヤの舞台に

西村氏がアグリスポーツに取り組もうと思ったのは、実は子どものためだけではない。農業は、アスリートのセカンドキャリアの選択肢のひとつになるのではないかと考えたことも背中を押した。

「職業としてのスポーツ選手は競技や種目によって待遇や収入に格差があり、プロとして生活できるのはごく一部で、あとは実業団という企業の所属選手になる形です。働きながら競技をしていこうと思うのだったら、人手の足りない農業に従事するのもいいのではないでしょうか。農業とスポーツは身体を使うことに加えて、忍耐が必要な局面があるなど、意外に似ている部分がある。農業でしっかり収入を得ることができれば、競技生活の時間を伸ばすことも不可能ではありません。結果的に選手としてのチャンスが増えるのです。スポーツのキャリアとビジネスキャリアを並行していこうと思う方には、農業の選択肢のひとつとして考えてほしいと思いますね」

子どもたちが大きな歓声を上げながら耕作放棄地を走り回り、作業が終わった夕食前に銭湯で気持ちよさそうに汗を流す様子は、高齢化の進む地元の人々にも元気を与えているという。久しぶりに子どもの声を聞いたと、目を細める高齢者も多いそうだ。

「人間関係が希薄になり、地域コミュニティがなかなか成立しにくい状況にあっても、農業で得た楽しい経験、地域の人との結びつきは子どもの心に強く残るはずです。そして大人になってふとした時に思い出して帰りたいと思うこともあるのではないでしょうか。子どもから大人、高齢者までみんなが参加できるスポーツとして、可能性の大きいアグリスポーツを多くの人に広めて行きたいですね」

農業が、かけっこなどのスポーツと結びつくことによって、スポーツの一種になり、つらいものではなくなる。柔軟な子どもだからこそ、その垣根をいとも簡単に跳び越えていけるのだろう。西村氏は、今回紹介したアグリスポーツ合宿だけでなく、今後“婚活アグリスポーツ”や“就活アグリスポーツ”にも取り組んで行きたいと展望を語った。アグリスポーツには、まだまだ可能性がありそうだ。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
写真提供:日本アグリスポーツ協会

配信元: パラサポWEB

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