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【視覚障害者の日常】近所のコンビニが “便利な場所から大切な場所になった日”

【視覚障害者の日常】近所のコンビニが “便利な場所から大切な場所になった日”

・最大の難関はレジへ並ぶ列

そして、最大の山場がレジに並ぶことだ。

列の最後尾がわからないのだ。

まず改めて店内の音を聞きなおす。

レジの「ピッ」という音や、店員さんの声。

レジがいくつ動いているかで、列の長さを予測する。

最大3つ。3つ動いていたら要注意。

店内にお客さんが多く、行列が長い可能性大である。

レジが1つか2つなら、最後尾の位置はだいたい分かる。

入り口から右に入って、まっすぐ進んだ先。カップラーメンの棚あたりから左に行けば最後尾に辿り着ける。

ただ、3つ動いているときは違う。

列がそこからさらに伸びて、右奥の飲み物コーナーやお酒売り場の方にまで回り込んでいることがある。

こうなると、正直まったく分からない。

その時は、一度カップラーメンの棚まで向かう。

途中、白杖が誰かに当たる。

「すみません」

そして聞く。

「最後尾、どこでしょうか?」

この瞬間だけは、やっぱり少し緊張する。

そして、必ず誰かが教えてくれる。本当に助けられている。

・「いつもありがとうございます」が嬉しい理由

並んだ後は、iPhoneの「拡大鏡」アプリを使う。

カメラを向けると、前の人との距離を教えてくれる。

離れたら進み、近づいたら止まる。

だいたい50センチくらいを保つようにしている。

そして、レジ前の目印は、アイスクリームの平置き棚。

そこまで来たら、もうすぐ自分の番だ。

「次の方」と呼ばれたら、念のため「私ですか?」と確認して進む。

支払いはすべて手探りだが、タッチパネルもカードリーダーも位置は覚えている。

一度覚えれば、意外とスムーズにいく。

そして最後。店員さんが袋を手にかけてくれて、こう言ってくれる。

「いつもありがとうございます」

この一言が、ものすごく嬉しい。

目が見えなくなる前から通っていた店なのに、今の方が明らかに「覚えてもらっている」と感じる。

名前も知らない。顔も分からない。

でも、存在はちゃんと認識されている。

見えなくなって、近所のコンビニが、便利な場所から「大切な場所」に変わったのだ。

ある日、いつもの声の店員さんにこう言われた。

「今日で最後なんです。いつもありがとうね」

とっさだったので、

「お疲れ様でした。こちらこそありがとうございました」

としか言えなかった。

店を出て、家に帰る道の途中で、じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。

メンタルHPは、それから3日間ずっとMAXだった……。

このコンビニは、ただの買い物の場所じゃない。

私にとっては、一人で行ける世界であり、誰かにちゃんと「ここにいる」と認識してもらえる場所だ。

参考リンク:「Seeing AI」「拡大鏡」
執筆:緑(RYOKU)
イラスト:Gemini

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