●料理のストレスが減らない三つの原因
パナソニックのスマートライフ事業部 調理機器事業本部の平田順士副本部長は、「ビストロの20年の節目に、新たな価値を提案していく。単に便利な機能を増やすのではなく、料理と向き合う時間そのものの価値を変えていく」と語る。
従来の調理家電は、家事の負担を減らす、調理の時間を短縮する、手間を省くなどにフォーカスして開発してきた。平田副本部長は「今求められているのはその先」とし、「料理を通じて自分らしさを感じたり、家族とつながる時間をつくることが重要ではないかと考える。心が満たされる意味的価値を創出していく」と話す。
共働き世帯が増え、ミールキットや冷凍弁当など便利なサービスも急増している。それにも関わらず、料理が家事の中で最も負担に感じるものになっている。
なぜ料理の負担は減らないのか――。分解すると、三つの原因があるという。まずは、複雑な意思決定。日々の献立に悩んだり、家族の好み、栄養、食材の在庫、時間など、“名もなき家事”として考えなければならないことが多すぎる。手間ではなく、考えることへの「認知負荷」を引き起こしている。
二つ目が、学ぶ・試す機会の減少。核家族化が進み、中食・外食の増加などにより、料理を学ぶ機会が減っている。安心して料理を試せる環境が減ることで、失敗したくないから新しい料理にチャレンジしなくなる。その結果、レパートリーが少なくなり、マンネリ化する。自分のつくる料理に飽きてしまうのだ。
三つ目が、自信と成長実感の枯渇だ。料理をつくっても褒めてもらうことがなく、孤立を感じてしまったり、SNSの普及により他人と比較するケースも増えている。どうしてこんなに上手に作れるのか、自分には時間がなくて無理など、「自分はできていない」という負の感情にとらわれてしまう。「結果的に、料理はやりがいのあるものではなく、孤独な作業になっているのではないか」と分析する。
こうした料理のさまざまな悩みを減らすために開発したのが、生成AIを活用したBistro アシスタントだ。
●成功体験が増えると好循環が生まれる
Bistro アシスタントは、調理をLINEで支援する対話型サービスとして25年4月にスタートした。調理中の疑問をLINEに投稿すると、AIチャットが解決策を提案する。家にある食材のレシピを提案したり、完成した料理の写真を投稿すると、モチベーションが上がるような評価をしてくれる。料理中に孤独に陥る心配がない。
献立を考えるストレスから解放され、困ったことがあってもその場で回答してくれる安心が得られる。料理の成功体験が増え、感情的な寄り添いにより自己肯定感が満たされる。「またつくってみたい」と思える好循環が生まれるのだ。

