●生成AIブームとAppleの静かな違和感
世間の一部では、「Appleは生成AIで完全に出遅れた」「他社に比べて機能が物足りない」という冷ややかな評価も散見されます。ネットニュースなどでも、ポジティブな初期評価が約20%程度にとどまるという話を見かけました。Intelligenceという言葉から受ける印象に対して、少し拍子抜けした人もいたのかもしれません。
でも、それは本当にAppleの「敗北」なのでしょうか。結論からいえば、「注目されていない=ダメ」ではないと思います。むしろAppleは、極めて意図的に“目立たないAI”を設計し、他社とはまったく異なるゲームを戦っているのではないかと想像しています。今回は、Apple Intelligenceがなぜ話題になりにくいのかを少しつぶやいてみようと思います。あわせて、自分が体験したことも交えながら、現在の生成AIバブルの死角と、Appleが狙う「OSインフラ化」についてもお話ししてみたいと思います。
●市場の期待と「地味な機能」のギャップがあった?
2011年頃、iPhone 4Sに「Siri」が搭載されたのが、Apple初の本格的なAI機能だったと思います。そしてApple Intelligenceが発表されたとき、市場や消費者が抱いた期待は大きく、「iPhoneが魔法のデバイスに変わる」「SFのような万能AIが手元にやってくる」といった劇的なAI革命だったのではないでしょうか。
しかし、実際に順次リリースされた機能の多くは、受信した長文メールの要約、不自然なビジネス文章のリライト、通知の優先度に応じた整理、写真の不要な写り込みを消去する「クリーンアップ」といった、極めて実用的で、既存の生活の延長線上にあるものが中心でした。そのため、全体としては少し「地味」な印象になったのだと思います。妻や次女はこのクリーンアップを気に入って、iPad Airを購入。きっとそのうち飽きるので、私と長女がもらう予定です。
話を戻しますね。人は、一瞬で芸術的な絵画を描いたり、高度なプログラミングコードを生成したりするような「爆発的なエンタメ性」に注目し、こぞってSNSにスクリーンショットを投稿します。しかし、Apple Intelligenceがもたらすのは、「日々の通知がスマートに整理される」「メールの要約がより賢くなる」といった、生活の中の利便性の向上です。そうした機能は、わざわざ大騒ぎして他人に勧めたくなる種類のものではなかったのだと思います。
しかも、私たちはすでにHey Siriなどを通して、知らず知らずのうちにAIの恩恵を受けてきました。つまり、「弱いから注目されていない」のではなく、「日常に溶け込みすぎていて、誰も騒ぎ立てない」というのが、今のApple Intelligenceなのではないでしょうか。

