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葬儀中に突然「このまま死ぬ」…住職を襲ったパニック発作、「精神科に通うのは敗北だと思っていた」15年間の苦闘

葬儀中に突然「このまま死ぬ」…住職を襲ったパニック発作、「精神科に通うのは敗北だと思っていた」15年間の苦闘

不安を消すのではなく、抱えたまま生きるという選択

そんな大矢住職に、転機となる出会いが訪れる。

「ある時、岩井寛先生の『森田療法』という本に出会いました。最初はピンときませんでしたが、繰り返し読むうちに、岩井先生ご自身の壮絶で人間味あふれるエピソードに衝撃を受けました」

森田療法とは、精神科医の森田正馬が1919年に創始した精神療法だ。不安や恐怖を取り除こうとするのではなく、それらを抱えたまま受け入れ、「あるがまま」の態度を養うことを重視する療法として知られている。

「この本で主張されている『あるがまま』とは、不安が全くなくなることではありませんでした。お葬式の最中に動悸がして逃げ出したくなるのは、『大切な儀式を絶対に台無しにしてはいけない』という、僧侶としての私の生真面目さや熱意の裏返しだったのだと気づきました。

恐怖を消そうと無理やり抗うのをやめ、不安を抱えたままで、ただ目の前のお勤めに向かって体を動かしていけばいいのだと腑に落ちたとき、深い安堵感に包まれました」

パニック発作のみならず、不眠や胃の不調も抱えながら、大矢住職は今も定期的にクリニックに通い、薬を服用して日々の勤めにあたっている。

「15年前の私が見たら落胆するかもしれませんが、今の私はこの状態をとても穏やかに肯定しています。病気や不安を無理に治すのではなく、自分の気質として抱えながら、うまく付き合っていくことにしました。

浄土真宗が説く阿弥陀仏の慈悲は『強い人間になりなさい』とは一言も言いません。『不安を抱えたまま、薬を飲みながらでも、その頼りない姿のままでいい』と包み込んでくれます。(※治療や服薬については自己判断せず、医師に相談してください) 

今は、お葬式で動悸がしても『おっと、また波が来たな』と、不安を同伴者のように横に座らせたまま、淡々とお勤めをしています」

大矢住職は現在、AIを活用した心の悩みに寄り添うアプリの開発にも取り組んでいる。その原点には、自身の病の経験があった。同じように病を抱える人に向けて、最後にこんな言葉をかけてくれた。

「『立派にならなくて大丈夫です』と一番にお伝えしたいです。病を抱えたままで、私たちはちゃんと穏やかに生きていけます。お薬を飲むことも、お医者さんを頼ることも、決して恥ずかしいことではありません。それは自分の弱さをあるがままに引き受け、今日という一日を丁寧に生きるための尊い工夫です。

弱い自分のままでいいし、変わらなくてもいい。そのままで、私たちは大いなるものに包まれ、今を生かされています。完璧でいなければと孤独な戦いを続けている方の心が、ほんの少しでも軽くなることを心から願っております」

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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