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【哀悼】「仕事とは好きなことをするものではない」美輪明宏が説いていた「給料とはガマン料」の真意

【哀悼】「仕事とは好きなことをするものではない」美輪明宏が説いていた「給料とはガマン料」の真意

シャンソン、演劇、映画、そして人生相談まで、時代を超えて人々の心に言葉を届け続けた美輪明宏さんが旅立った。生前に語っていた「美しく生きる」ための知恵をたどる。

この混乱の時代をどう生きるか…今こそ美輪明宏の言葉に生きるヒントがある。厳しくも温かい美輪節で解き明かすエッセイ集『乙女の教室』(美輪明宏著・集英社文庫)から一部抜粋・再構成してお届けしたい。

身も心も疲れる。それが、仕事というもの

「美輪さんはうらやましいなぁ。スポットライトを浴びて好きな歌を歌うと、大観衆が拍手してくれる。なかには『ブラボー!』なんて叫んでいる人もいる。さぞかし気持ち良いでしょう?」

コンサートを聴きに来てくださった方のなかには、そうおっしゃる方がたくさんいます。たしかに多くの方々に喜んでいただけるのは、私の幸せ。うれしいことです。でもその半面、休憩を入れて三時間、広い舞台にたったひとり、強い照明にさらされながら十四センチのハイヒールを履き、重いドレスの裾をひるがえして、立ったまま歌い続けるのです。夏には舞台の上は冷房など効きませんから、あまりの暑さにくらくらしてきます。終わる頃には、足も腰もカチンコチンに固まり、身も心もぐったり疲れ果てます。

ですが、これが仕事というもの。

好きなことを好きなようにするのは趣味であり、仕事とは言いません。仕事とは、自分に求められている責任を果たし、それに対して報酬を得ることを言います。責任を果たすためには、ときには好きではないこともやらねばなりません。場合によってはつらいこと、苦しいこと、みっともないこと、恥ずかしいことも、しなければなりません。

みなさまの仕事でも、同じでしょう? 会社員の方たちは、朝から夕方まで会社に拘束され、ときには深夜まで会社にいなければなりませんね。それは、毎日その時間を会社に捧げることに対して、お給料をいただいているから。時間と引き換えにお給料という報酬をいただいているからです。

もちろん、時間だけではありません。パソコンを操作する技術、商品を売り込む才能、事務や庶務をこなす能力、モノを販売する力、商品の魅力をアピールするテクニックなどなど、人によって提供できるものはさまざま。その上、ときには取引先の人間に愛想よくし、そりの合わない同僚ともうまく付き合い、無能な上司に従うフリまでしなければならない。これら全部をひっくるめて、仕事です。

ですから、お給料とはガマン料なのです。楽な仕事など、この世にはありません。 

才能のある人は、それを磨く使命があります

昔、ロシアの有名なバレエダンサーが来日したとき、日本のインタビュアーがこんな質問をしました。

「ロシアのバレエと日本のバレエはどこがどう違うのでしょう?」

彼はこう答えました。

「あなたの国では、バレエを好きな人が踊ってらっしゃる。でも私の国では、バレエを踊らなくてはいけない人が、踊っているのです」

言いえて妙ではありませんか。バレエだけではなく、音楽や演劇、美術、芸術など特殊な技能を必要とする世界では、才能のある人間こそが、その仕事に取り組むべきなのです。私は歌が好きで、歌う才能を与えられました。その才能を生かすのが使命だと思うので、仕事にしました。

ですが、天職だからといって、楽をしているわけではありません。人気の浮き沈みも経験していますし、私のスタイルを理解してもらうまで、長い時間がかかりました。

二十代のころの私は、人々に喜びを与え、美しい真実を表現する美しい俳優になりたいと願っていました。歴史を勉強して歌舞伎の創始者である出雲の阿国や女方を極めた芳沢あやめという歌舞伎役者のことを知り、目標としました。マレーネ・ディートリッヒやグレタ・ガルボなど美しい女優たちの演技やしぐさ、表情を研究して頭の中に叩き込み、栄養にしました。暮らしを切り詰めてお金をひねり出し、日本舞踊からモダンダンス、発声練習にセリフ術、三味線などなど、ありとあらゆるお稽古事に通いました。

そうやって得た知識はすべて、今の私の血肉になっています。そしていざ舞台に立つと、限界まで肉体を酷使して、すべてを歌に捧げるのです。

才能に恵まれ、それを仕事にした人には、さらに才能を磨き上げる使命があるからです。努力をしない人間は、どんなに才能があっても、落ちぶれていくばかり。やがて才能からも仕事からも、見放されてしまうのです。 

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