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〈富士山は“登ってはいけない山”になるのか〉「考え方がズルい」市長発言にクライマー猛反発「アルピニストが育たなくなる」6000人超の反対署名を本日提出

〈富士山は“登ってはいけない山”になるのか〉「考え方がズルい」市長発言にクライマー猛反発「アルピニストが育たなくなる」6000人超の反対署名を本日提出

「1年のうち約10か⽉を占める富士山の閉⼭期は、登山を全⾯禁⽌せよ」という静岡県の自治体と、それに反対する登山家たちとの論争が拡大している。登山家側のネット署名の賛同者は6千人を超え、日本山岳会などの有力団体も地元市長の発言に抗議する声明を出した。「安全性を高める制度設計」を求める登山家側と、そもそも“登るな”という自治体が同じテーブルにつくことはあるか。

富士宮市長は「登らないでいただきたい」、しかしネットで反対署名が…

富士山は静岡県と山梨県にまたがっているが、閉山期の登山禁止を求める動きは主に静岡県側で起きている。

旗を振るのは富士宮市の須藤秀忠市長だ。4月10日の定例記者会見で、

「あっち(登山者)は勝⼿に登りたいと⾔ったって、こっちは責任上どうしても助けなきゃなんない。そういう事態に陥る前に登らないでいただきたい」

「遭難しても助けてもらう時に⾃分の費⽤負担がいらなくて済むなんていうこと⾃体が安易すぎる。考え⽅がズルい」

と話し、論争に火が付いた。

富⼠⼭の4つの登山道は夏山期間のおおむね7、8月の2か月間だけ入山が可能だ。それ以外の時期は5合目以上の登山道が閉鎖されるものの、立ち入りはできる状態だ。

そうした中、ことし3月にはスキー目的のスウェーデン国籍の女性とニュージーランド国籍の男性が滑落する遭難事故があった。近年、こういった外国人の閉山期の遭難が目立ち、この時期の入山に厳しい目が注がれている。

このため、すでに埼玉県で導入されている防災ヘリによる救助の有料化の検討が、静岡・山梨両県で始まっていた。

ただ須藤市長の「登らないでいただきたい」「考え方がズルい」という発言は従来のスタンスを超えた「登山者への命令や非難」と受け止められ、登山家から撤回要求が生まれた。ネットには「富士山の『夏季以外の登山一律禁止』ルール化に反対します」と題する署名が登場。市長の発言に抗議し撤回を求めるとし、こう続ける。

〈(発言は)登山者全体を一括りにし、誤解を招く極めて問題のあるものです。(中略)適切な準備と自己責任のもとで自然に向き合う登山行為は尊重されるべきです。また、環境省や関係自治体も、冬季登山に対して一律禁止ではなく「万全な準備」を前提とした注意喚起を行っています。

(中略)実際の遭難事故を見ても、その多くは準備不足や情報不足によるものであり、とりわけ近年は外国人登山者によるケースが増えています。問題の本質は「冬山登山そのもの」ではなく、正しい知識やリスクが十分に伝わっていないことにあります。それにもかかわらず、一律禁止という極端な手段で解決を図ろうとする姿勢には大きな疑問があります。〉

そして求められるべきなのは「安全性を高める制度設計」だと提言。特定エリアへの登山届の義務化や事前講習制度、遭難救助費用の明確化など、他の地域で導入されている制度を参考にするべきと求めている。

クライマーは「日本人アルピニストが育たなくなる」

署名を始めたクライマーで山岳映像制作者の鈴木岳美氏(31)は、冬の富士山は海外の高峰を目指すクライマーの訓練の場で、登山禁止になれば「日本人アルピニストが育たなくなる」と話すが、最近の富士山を取り巻く世論も懸念しての訴えだともいう。どういうことか。

「安易な遭難という言葉が報じられ“山=危険”という登山文化を偏った目で見るかたが増えてしまっていると思います。

実際の登山は、考えられる危険に対し肉体を鍛えて知識も得て、経験もして大自然に向き合う鍛錬が中心で、それで人間としての成長ができる、ある種の修行です。そこを見ず単純に危険ということに目が向く状況が1番良くないと感じています」(鈴木氏)

この署名への賛同者はじりじりと増え、29日までに6000筆を超えた。さらに日本山岳会など主要な5団体でつくる「⼭岳安全対策ネットワーク協議会」も20日、ネット署名と同趣旨の声明を発表。

〈今回議論されているような「⼀律禁⽌」という⽅向性は、問題の本質的解決につながるものではなく、積み重ねられてきた⽇本の登⼭⽂化や、個々⼈が適切な準備と責任のもと⾃然に挑戦する権利/⾃由を過度に制限するものになりかねません。〉

と訴え、日本の登山家全体を巻き込む論争に発展した。

対する須藤市長は19日に、自分が会長を務め他の静岡県内4市1町とつくる「富⼠⼭ネットワーク会議」でまとまり、閉⼭中の登⼭を制限する仕組み作りなどを求める要望書を鈴⽊康友静岡県知事に提出。静岡県は同日、ヘリによる救助費用の有料化や登⼭道規制強化の議論を始めた。

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