あの渦巻きは、ただの排泄物ではなかった

ところで、ラグワームの糞は、なぜ、崩れにくい頑丈な渦巻きの塔になっているのでしょうか。
研究チームによれば、このしっかり巻かれたらせん構造は、潮が満ちて海水に浸かっても、波で砂がかき混ぜられても、その形をしぶとく保ち続けるといいます。
そしてこの形が、巣穴の入り口が砂で詰まったり、崩れたりするのを防いでいると考えられています。
美しいだけではない。ラグワームの暮らしを、静かに守る「ふた」の役目も果たしている、というわけです。
じつは「うんちの物理」を大まじめに研究したのは、この一本が初めてではありません。
2017年には別の研究チームが「排便の流体力学」を調べ、ネコからゾウまでの哺乳類では、体の大きさが違っても、用を足す時間がおよそ12秒前後にそろうことを示しました。今回の論文も、その研究をきちんと引用しています。
“うんち”の物理は、地味ながら脈々と受け継がれる、立派な研究分野なのです。
そのダーウィンが、結局解けなかった謎——「なぜ、ミミズのフンはあの形になるのか」。
それから140年以上の時が流れ、謎はひとつの物理で説明されました。
もしダーウィンがこの論文を読むことができたなら、生きものの営みの奥に物理法則がひそんでいたことに、きっと感激したことでしょう。
元論文
Coiling of lugworm feces reveals universal mechanics for the shape of poo
https://doi.org/10.1038/s41467-026-72566-7
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

