誰を信じ、誰を恐れているかは、配置に表れる
この構造を制度として固定したのが、軍に関する「虚偽情報」を広めた者に最長15年の禁錮刑を科す法律だ。独立系メディアは沈黙し、自国の敗北を事実として報告するジャーナリストや士官は逮捕される。親露派の軍事ブロガーでさえ、検閲の枠内でしか発言できない。
スターリン時代の「大粛清」の再来を危惧する声まで上がっている。クレムリンには、幾重ものフィルターで濾過された心地よい情報だけが届く。
ここに、プーチンの人事の本質が見えてくる。彼は腹心の友を切り、軍人でない会計係を国防相に据え、嘘つきの参謀総長を温存し、FSBに将軍たちを脅させている。
これは強い指導者の采配ではない。誰も信じられず、現実を直視する勇気を失った権力者が、恐怖だけで組織を縛り上げている姿だ。
人事は嘘をつかない。どれほど勇ましいレトリックを並べても、誰を信じ、誰を恐れているかは、配置に表れる。会計係に国防を任せ、嘘つきに戦況を語らせる国家が、長期の消耗戦を勝ち抜けるはずがない。
文/小倉健一 写真/shutterstock

