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元日本1位のボクサー村松竜二。「人と接するのが大嫌いだった」孤高の男が変わった理由

元日本1位のボクサー村松竜二。「人と接するのが大嫌いだった」孤高の男が変わった理由

あまりの面白さに体験当日に続ける決心を。ブラインドボクシングの魅力

関章芳選手。日本を代表するブラインドボクシングの選手として日々トレーニングを行いながら、選手人口を増やすための取り組みも行っている

D&D BOXING GYMに所属する関章芳選手は、網膜色素変性症を抱えブラインドボクシングに打ち込む弱視の選手だ。40代で入門し、2022年夏には後楽園ホールのリングでスパーリングを披露。普及活動にも力を注いでいる。

始めたきっかけは、同じ視覚障がいのある知人からの一言だった。

「ブラインドボクシングができるジムが家の近くにあることを聞いて。体験に行って、その日に『続けよう』って思えるほど面白かった」

“見る側”から“やる側”へ。関さんは、そのギャップを率直に笑いながら語る。

「全然違いますね。まだ視力があってボクシングを観戦しているときは『なんで手出さねえんだよ』とか思ってたけど……そんなこと言うもんじゃない(笑)。ブラインドボクシングは1ラウンド2分ですが、ヘトヘトになる。1ラウンド3分を12ラウンドやるのって相当大変だろうなって」

インタビューでは笑顔で話をする関さんではあるが、練習では真剣そのもの。シャドーでは「ビュッ」と空を切る音を確かめるように拳を突き出す

ヘトヘトになることがわかっていても、関さんはグローブをつけ、リングに入る瞬間の高揚感は忘れられないという。

「グローブをつけてリングに入って、いつも夢みたいです」

関さんがブラインドボクシングを「身近」と表現するのは、競技特性にも理由がある。

「もともとゴールボールをやっていたんです。でも1チーム3人必要で、最低6人いないと試合ができない。練習も人が集まらないと難しい。でもブラインドボクシングは、1人で試合に出る。シャドーとか筋トレとか、練習は1人でもできるから始めやすいスポーツです」

さらに関さんは、ブラインドボクシングは“なりきる楽しさ”があるという。

「ブラインドボクシングは殴り合うスポーツじゃない。採点競技で、いかに綺麗に打てるか、コンビネーションを見せるボクシング。だから怖がらないで、体を動かしたい人、カッコつけたい人にいい」

関さんの挑戦は、視覚障がいのある人のスポーツの可能性を、社会に示している。

村松さんは、ブラインドボクシングの体験授業を小学校で行なっている。

「共生社会を実現するには、子どもたちが障がいについて理解しないといけない。そのためには実際に体感することが大切だと思っています」

村松さんが痛感しているのが「障がいを理解するには時間がかかる」という現実だ。

「障害者手帳を所持したのは45歳の時でした。25年かかってます。状況が25年かかったんじゃなくて、私自身が障がいのある人のことを理解し納得するのに25年かかった。でもそれからは障がいがあると言葉にすることで、障がいのある方の対応にも変化が出てきたように感じます」

孤高のプロボクサーは、いま“共生のリング”を作り続けている。その原動力は、立派な理念だけではない。仲間の笑顔や感謝、成長する姿に感銘を受け、少しずつ変化した日々の実感だ。

村松さんに法人名の「B-box」の由来を尋ねると、こう教えてくれた。

「 “BONDS OF BOX” の略称です。BONDSは“絆”という意味で。まずはボクシングを通して絆をつくる。それと“BOX”は、障がいのある方たちの夢をその箱に詰め込んで、一緒に叶えましょうっていう意味を込めています」

共生社会は、制度やスローガンで急に実現するものではない。“手伝いすぎない勇気”と、“やらせる覚悟”。そして、できたことを共に喜ぶ時間。その積み重ねの中で、共生社会はかたちづくられていく。

BONDS OF BOX。その二つの言葉が重なるところに、共生社会の“リアル”がある。

PROFILE 村松竜二
1974年生まれ・山梨県出身。日本ライトフライ級1位の元プロボクサーで、戦績は36戦22勝(10KO)。1994年に事故にあい、左手首の腱を断裂。右手一本で戦い「竜の爪」の異名をもつ。2002年、試合中に眼底骨折で右目の外側の視界を失い、2004年引退。その後指導者となり、2015年からボクシングを通じて社会貢献活動を開始。現在は一般社団法人B-box、D&Dボクシングジム会長として障がい者ボクシングの指導や、青少年の自立支援を目的としたボランティア活動を行う。

text by Akihiro Ichiyanagi(Parasapo Lab)
photo by Naoyuki Hayashi

配信元: パラサポWEB

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