東京都新宿区高田馬場の路上で昨年3月、ライブ配信中の「最上あい」こと佐藤愛里さん(当時22歳)が刺殺された事件で殺人などの罪に問われた高野健一被告(44)=栃木県小山市=。1日に東京地裁で開かれた裁判員裁判の初公判で、検察側は証拠調べの続きとして佐藤さんの母親の供述調書を読み上げた。
遺族は「恨むし一生許さない。高野さんには厳しい処罰をしてほしい」
「娘の愛里は私と内縁の夫との間に生まれた子で、4人の子供のうち、ひとしお可愛い子だった。みんなに愛され、また愛してほしいという思いから愛里と名付けたが、生まれた直後に実の父親が事件を起こして逮捕され、私自身も心身の具合が良くなく、とても子供を育てていける状態ではありませんでした。
そのため4人の子供は児童養護施設で育っています。愛里は生後6か月で乳児院に預け、児童養護施設を経て高校入学のタイミングで実家に戻ってきています。(児童養護施設にいたときも)毎月1回は一緒にご飯を食べたり、長期休暇は実家で一緒に過ごしました。4人の子供の中で一番成績が良かったのは愛里で、顔や性格も一番私に似ていてとてもかわいい存在でした」
佐藤さんは児童養護施設を出たあと、一時期は母親と実家で暮らしていた。その後、佐藤さんは結婚し出産するが1年で離婚し、母子支援施設で暮らした時期もあった。検察官は供述調書の読み上げを続けた。
「愛里が令和3(2021)年に母子支援施設を退寮した後、寮に(高野被告と別の男から)『お金を貸したから返してもらいたい』と手紙が届いたこともありました。実家には帰りたくないのだろうと連絡も取りませんでしたが、令和6(2024)年に愛里が山形駅で生配信しているのを知ってすぐに会いにいきました。
その時にお金を返せという手紙の話をすると『もう解決したから大丈夫』と言っていました。そして2025年3月、女性配信者が襲われたというニュースを見てまさかと不安な気持ちになっているところに警察から電話があり、『このたびはご愁傷さまでした』と言われました。
頭が真っ白になり、涙が止まらなくなりました。車で東京に向かう間も、何かの間違いだ、絶対に違うという思いが入り混じっていました。警察署で対面した愛里は顔が包帯で覆われていて、あまりのショックに言葉が出ませんでした。
その時は抱きしめられませんでしたが、のちに戻ってきた愛里は傷もきれいになっていて、『もう痛くないね』と抱きしめました。なんで愛里が殺されなきゃいけなかったの。高野さんもお金のことで苦しかったのかもしれないけど、恨むし一生許さない。高野さんには厳しい処罰をしてほしい」
「あいりを守ってみせる」「愛里の力になりたい」
これを受けた弁護側の証拠調べでは、高野被告が金銭面で徐々に追い詰められていった状況の詳細が明らかにされた。
令和2(2020)年12月時点で被告のメイン口座の残高は約454万円、他にも2口座に合わせて数万円が入っていた。しかし、佐藤さんと出会ってからの被告は、配信アプリ「ふわっち」への投げ銭(約163万円)、キャバクラ店への支払い(約77万円)、求めに応じて貸し付けた金(約254万円)と佐藤さんに関連する支出を重ね貯金が底をついていた。
事件当時、被告は障害年金と就労継続支援A型事業所の給与をあわせて月額16万円~18万円の収入があったが、佐藤さんのために消費者金融から借りた金の返済などを含め月に5万5千円の固定費がかかっていた。
被告がここまで金銭的に困窮したのは、佐藤さんとの間に生じた関係を維持したかったからだろうか。弁護側はそうした被告の内面の動きを伺わせる2人のLINEでのやり取りを明らかにした。「ふわっち」での動画配信で佐藤さんを知った高野被告は高額な投げ銭で関心をひき、佐藤さんからの申し出でLINE交換が始まった。
以下はその後のやり取りの要約だ。<>内が佐藤さん、「」内が高野被告が送信したメッセージである。
<(配信を通して)はじめてのlineの友達>
<愛里の働いている店来る?>(編集部注・山形のキャバクラ店への来訪の打診)
「愛里と会いたいと思う」
<(配信ができるのは)マジラブのおかげ>
これは、高野被告が悩み相談に乗ったり、投げ銭してくれることがライブ配信を支えているという謝意だ。高野被告は結局、栃木県から山形のキャバクラまで合計4回、足を運んでいる。そんな高野被告に対し、佐藤さんが様々な理由をつけて『助けてほしい』とLINEで借金を申し出て、被告は振り込みを繰り返した。こんなメッセージとともに。
「あいりを守ってみせる」「愛里の力になりたい」「大好きだから」「愛里だから特別に振込したよ」「あー愛里大好き」

