宇宙の姿は偶然か、設計図の描く必然か?

この理論がもし正しければ、宇宙定数は、その意味を大きく変えることになります。
「よくわからないが、とにかく小さい数」から、「時空の性質に守られて、簡単には動かない値」へとなるわけです。
そしてこれは「なぜ宇宙はバラバラにならずに、私たちが生きていけるほど、都合よくできているのか」という、とても古くて深い問いに触れるものです。
これまで多くの物理学者は、宇宙定数がありえないほど絶妙に小さい理由を、こんなふうに説明してきました。
「宇宙は、数えきれないほどたくさんある。その中で、たまたま生命が生まれられる値を持った宇宙に、私たちがいるだけだ」と。
いわば、無数のくじの中から、たまたま”当たりくじ”を引いた、幸運な偶然の産物だ、という見方です。
しかし今回の研究は、別の可能性を開きます。
宇宙定数が飛び飛びの値しかとれないのだとしたら、そもそも「くじ」の目盛りは、これまで思われていたような、どんな値でも取れるなめらかな連続ではなく、あらかじめ飛び飛びに区切られていたのかもしれません。
宇宙が穏やかで、星や生命を許すのは、なめらかな目盛りからの幸運ではなく、目盛りが最初から飛び飛びに定められていた結果かもしれないのです。
ただ、今回の研究によって宇宙定数の全ての謎が解かれたわけではありません。
私たちの宇宙の宇宙定数が、なぜこれほど小さくおだやかな値におさまっているのかについても、絶対的な答えは出ていません。
私たちは、なめらかに続く無限の目盛りから、たまたま良い一点を引き当てた存在なのでしょうか。
それとも、もともと飛び飛びに区切られた段の上に立つ、宇宙の住人なのでしょうか。
どこまで”偶然”とみなし、どこから”必然”とみなすのか。
宇宙定数をめぐる理論は、そのまま「私たちはなぜ、ここにいるのか」という、存在の意味を問い直す入口にもなるでしょう。
参考文献
Could the mathematical ‘shape’ of the universe solve the cosmological constant problem?
https://www.brown.edu/news/2026-04-20/cosmological-constant-problem
元論文
Cosmological Constant from Quantum Gravitational 𝜃 Vacua and the Gravitational Hall Effect
https://doi.org/10.1103/rzz5-p4f4
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

