立ち上がってから、見えてしまったもの
彼女の親友が玄関を開けたのを合図に、僕は立ち上がりました。「今日、一番伝えたかったのはこれです」と切り出して、隠していたケーキを運び、彼女の合格を全員に伝えました。あちこちで拍手がはじけ、グラスを合わせる音が続きました。
けれど顔を上げた彼女は、口元だけで笑っていました。完璧な見せ場を整えるあいだ、ずっと彼女をひとりにしていたのです。集まりに何度も、一言、「最後まで待ってて、いちばん良い形で言いたいから」と耳打ちさえしていれば、彼女は同じ時間をまったく違う気持ちで過ごせたはずでした。秘密にしておくことと、待っていてほしいと頼むことは、彼女にとってまったく別のことだったのに。
そして...
帰り道で、僕はしばらく言葉を探しました。完璧な渡し方を選ぶより先に、彼女の顔でただ「すごいね」と言えばよかった。せめてあの席に着く前に、一言、最後に取っておきたいと伝えておけばよかった。歩きながら、僕はようやく「ごめん、ずっとひとりにさせてた」と口にしました。
彼女は首を振って、「ちょっと寂しかった、ほんとはね」と短く返してくれました。その短い言葉の中に、まだ消えていないものがあるのが、はっきりわかりました。次に彼女を祝うときは、サプライズの段取りより先に、まず彼女に話を通します。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
