じめじめとした天気が続く梅雨が明ければ、やってくるのは猛暑だ。今や公立小中学校でも普通教室ではほぼ100%、エアコン等の空調設備が設置されているが、火を使い、熱や湿気がこもりやすい給食調理室の設置率はいまだ約8割にとどまることをご存じだろうか。
さらに学校給食衛生管理基準で示す温度・湿度を保つことができる設備を設置できているのは、自校方式の調理室等では全国の調理室の5割にも満たない。「まるでサウナ」のような場所で働く調理員たちに、その実態を聞いた。
室温40度、湿度70%の空間で、白衣と帽子、マスクをつけて調理
容量140リットルの釜が5つ、7キロ分のお米を炊ける炊飯器が7台、一気に大量の揚げ物を揚げられるフライヤーが1台……。給食調理室では、同時にいくつもの釜や炊飯器を動かすので、湿度は高く、火の近くは特に暑い。
首都圏の中学校で調理員として働く小松優子さん(仮名、40代)は、そんな調理室で8年間ほど勤務している。エアコンはなく、仕事柄、白衣と帽子、マスクの着用は必須だ。ここ数年は特に暑さにまいっているという。
「火の元から5メートルくらい離れたところにある温度計でも、夏は40度近くになることはざらです。火にもっと近いところなら、42~43度くらいにはなっていると思います。換気扇から入ってくる空気も暑いし、湿度は70%くらいだし、まるでサウナ状態です」(小松さん)
こまめに水分補給をしたり、塩あめをなめたりと暑さ対策はしているが、それでも頭痛などの体調不良に陥ったことも何度かある。なかには熱中症とみられる症状で救急搬送された調理員もいるという。
「下ごしらえを終えてから、釜や炊飯器を使った調理にあたる時間は1日に2時間ほど。調理員の命にも関わりますし、給食室を出てから子どもたちが食べるまでの間に、給食を一時的に置いておく場所も含めて暑いので、衛生面も心配になります」(同)
学校給食衛生管理基準の温度・湿度を保てる調理室は全体の約5割
小松さんの職場のような調理室は、決して珍しくない。
文部科学省によると、2024年9月時点で公立小中学校・特別支援学校など(以下、小中学校)の普通教室におけるエアコン・スポットクーラー(以下、空調設備)設置率は99.1%。2010年には19.3%、2018年には60.2%だったため、ここ近年の夏の危険な暑さを受け、各自治体で設置を大々的に進めたことが分かる。
一方、学校内にある調理室(自校方式)で空調設備が設置されているのは、2024年9月時点で83.6%。2020年の66.5%よりは17.1ポイント増えているが、普通教室における設置スピードに比べると遅いようだ。
さらに、学校給食衛生管理基準で示す温度・湿度を保つことができる設備を設置できている調理室に限ると、全体の48.7%にとどまることも見逃せない。
学校給食の調理業務を受託する株式会社東洋食品の荻久保瑞穂専務は「空調設備が設置されている『83.6%』には、エアコンでなくスポットクーラーのみが設置されているところも含まれます。スポットクーラーをつけても、室内の温度を下げるまでには至りません。衛生管理上、調理場から離れたところに設置し、従業員がクールダウンするために活用する程度です」と話す。
なぜ毎年のように猛暑が続いているのに、調理室へのエアコン設置が十分に進まないのだろうか。
文科省は、調理室を含む学校施設へのエアコン設置に使える補助金を用意しているが、限られた予算の中で、子どもたちが日常的に使う普通教室への設置が優先されているのが実情のようだ。荻久保さんは「物価高で工事費用がかさむことも、給食室のエアコン設置が進まない一因になっているのでしょう」と推測する。
また、「少子化が進むと、いずれ自校方式ではなく、給食センターで複数の学校の給食をまとめて調理する方式になっていくと予想されていることもあり、各学校の調理室へのエアコン設置がなかなか進まない」(文科省関係者)といった実態もあるようだ。

