東京都北区の区立滝野川第三⼩学校で授業中に出火し、児童ら11⼈が重軽傷を負った火災は、火元の音楽準備室を使っていた40歳代の音楽担当の女性教諭が「出火した当日に洗濯した私服を準備室で干していた」と告白し、学校の管理体制の問題が浮上した。また、音楽室にあった「救助袋」が、近年の避難訓練で実際に扱われていなかったとみられることもわかった。
「金管バンドの朝練の指導等もあるので早い時間の出勤をしていたのでは」
2日夜に開いた記者会見で高草木政浩校長は、腰の骨を折って入院中の音楽教諭から聞いた話を基に、
「音楽教諭はおおむね朝6時頃に出勤していました。以前から家庭科室の洗濯機を使って私服や金管バンドなどで用いていた清掃用のタオルなどを洗濯し、音楽準備室で干しており、火災のあった19日当日は自身の服を洗濯して干していたことを確認しました」
と明らかにした。またこのことは学校が把握していなかったと主張した。
音楽準備室には電気ストーブや複数のサーキュレーター(送風器)があり、いずれかの電気製品から出火した可能性が浮上している。
この教諭が早朝に出勤していた理由について校長は、推測だと前置きしながら、
「金管(バンド)の朝練の指導等もあるので早い時間の出勤をしていたのではないか」
と述べている。
会見で高草木校長は、
「迷惑とご心配をおかけしましたことに心よりお詫び申し上げます」
と謝罪。同席した北区の山田加奈子区長も改めて謝罪し、校長や区幹部らともに頭を下げた。
翌3日夜、学校は保護者説明会を開き、会見で公表したことを保護者に説明し謝罪した。
参加した母親は説明会の内容についてこう語る。
「説明会には100人は参加していたと思います。説明は記者会見と同じ内容でした。音楽の先生や学校を責めるような発言は保護者からはなかったです。『なんでそんな朝早くに出勤するの?』とは思いましたが、音楽の先生は金管バンドの朝練に付き合って早く出勤することがあると聞くと納得できました。
保護者からは『音楽の先生のフォローも大事だ』とか『どんなふうに洗濯していたとか分かったら教えてほしい』という声は出ましたが、答えを求めるものではなく要望でした。
それよりも、子どもたちはこれから学年ごとに周辺の学校にバラバラに分散登校することになり、2学期からは閉校になった他の学校の建物で授業を受けます。保護者はそちらの心配の方が大きくて、遅刻しそうな時や緊急時の連絡はどうしたらいいのか、とかいう具体的な質問が続きました」(参加した母親)
「救助袋を下ろそうと試みましたがすでに煙がひどく…」
この母親は音楽教諭について、
「火災直後は同情していましたが、今は複雑な気持ちですね」
と口にした。
学校の近所に長年暮らす70代の女性は、
「滝野川第三小学校は昔から鼓笛隊がすごく立派で、運動会ではパレード行進して演奏するのが本当に素敵でした。ただ、今も金管バンドや鼓笛隊にすごく力を入れているという印象は正直そこまでないですね。『昔はあったね』って思い出すくらいで。今回、音楽の先生がいけないことをしていたのかもしれませんが、どういう事情でそうしていたのか…」
と音楽教諭に同情的だ。ただ近所では、
「私服を干してたなんて、こんなばかばかしい話はないです」「最近、朝の楽器の練習の音も聞こえなかった」
と怒りを隠さない住民も複数いる。練習は防音設備が整った環境で行なわれていた可能性も十分にあるが、教師による失火が事実となれば見る目はさらに厳しくなりそうだ。
いっぽう今回24人の児童が逃げ場を失った4階の音楽室には、耐熱性や耐久性に優れた繊維で作られた袋に入って地上へ滑り降りる避難器具「救助袋」が設置してあった。しかしこれが避難に実際に使われなかったことにも目が向けられている。
高草木校長は当時の状況について、
「担任は(音楽室の)救助袋を下ろそうと試みましたがすでに煙がひどく、救助袋の準備に時間をかけるより児童を煙から遠ざけることが先と判断し、担任が児童を抱えひさし側に避難をさせました」
と説明。救助袋の使用には地上でも作業をする人手が必要で、当時別の教員1人が音楽室の真下に駆け付けたが結局救助袋の使用をやめたという。どのような意思疎通をしたかは確認できていないと校長は言う。

