私の駅ばかり並ぶ物件候補
付き合って3年になる彼と、そろそろ同棲しようかという話になりました。休日に物件サイトを見たり、不動産屋さんへ行ったりして、少しずつ現実味が出てきた頃です。
ただ、彼が選ぶ候補には不自然な共通点がありました。彼の職場は私の会社とは反対方向で、通勤にはかなり時間がかかります。それなのに、彼が「ここ良さそう」と見せてくれる部屋は、いつも私の会社に近いエリアばかりでした。
最初はありがたいと思っていました。私の通勤を楽にしようとしてくれているのかもしれない。そう受け取ろうとしていましたが、候補を見るたびに同じ駅ばかりが並ぶうち、だんだん小さな違和感が消えなくなっていきました。
カフェで聞いた理由
内見の帰り、駅前のカフェで向かい合って座ったとき、私は思い切って聞きました。「どうして自分の職場は遠いのに、私の駅ばかり選んでくれるの?」
彼は少しも迷わず答えました。私の会社は、職場の近くに住むと家賃補助が増える。だからその制度を使えば、私が家賃を少し多く出せる。そうすれば彼の負担も減る、と。
言い方はあっさりしていました。まるで、2人にとっていちばん合理的な答えを見つけたという顔でした。でも私は、その瞬間からカップに手を伸ばせなくなりました。気遣いだと思っていたものが、いつの間にか計算の中に入れられていた気がしたのです。
