聞けなかった本当の理由
「こんな時まで、よけてくれるんだ」
私がそう言うと、彼は皿に目を向けました。返事はありませんでした。
怒ればよかったのかもしれません。理由をもっと聞けばよかったのかもしれません。でも、彼がしいたけをよけ続ける姿を見ているうちに、責める言葉より、これまでの時間ばかり浮かびました。
伝票を持って席を立つ彼を見送りました。皿の端には、彼がよけたしいたけが残っていました。3年間、当たり前みたいに受け取っていたことを、私はその場で初めてはっきり見た気がしました。
そして...
謝ってほしかったわけでも、関係を戻したかったわけでもありません。ただ、終わりにするなら、その理由くらいは聞きたかったのです。
彼が最後まで話さなかった本音は、今も分かりません。それでも、あの皿に残ったしいたけを見るたび、優しさだけでは届かないことがあるのだと思います。
別れの場面で必要だったのは、いつもの気遣いではありませんでした。最後くらい、私に分かる言葉で向き合ってほしかったのです。
(20代女性・事務職)
本人記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
