聞かずにいられなかった理由
皿を洗う彼の背中に、私は聞きました。「どうして写真ばっかり撮るの。一度もおいしいって言ってくれないのに」
彼は蛇口を止めて、こちらを見ました。少し考えてから、「自分でも作れるようになりたくて」と言いました。
私が想像していた答えとは違いました。彼は、私の料理を笑うためでも、採点するためでもなく、覚えるために撮っていたそうです。私が疲れている日に、自分が同じものを作れるようになりたかったと言いました。
そして...
あとで、彼は撮った写真を見ながら肉じゃがを作ってくれました。味は少し薄く、じゃがいもは崩れていました。それでも、私が作ったものを覚えようとしていたことは伝わりました。
ただ、嬉しさだけで終わる話でもありませんでした。半年間、私は褒められない食卓の前で、勝手に不安を増やしていました。彼も、伝えるべきことを写真に任せていました。
今は食べる前に、彼が短く感想を言うようになりました。私も、言ってほしいことを我慢しすぎないようにしています。食卓に必要だったのは、写真より先に交わす言葉だったのだと思います。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
