月収200円、94連休から再起。「解散したその日から」アート制作を開始
コンビとして活動を続ける中、あらぽんさんの心には葛藤がありました。テレビで喋られないのに、このまま芸人を続けていけるのか……。そんなとき、背中を押してくれた人たちがいました。
ひとりは、放送作家の鈴木おさむさんです。ラジオ出演のオファーを受けた際、あらぽんさんが持参したひょうたんのアート作品を見て、「何これ!マジでこれ商売にしたほうがいいよ」と言ってくれたのです。
「はじめて『あ、商売にできるんだ』と思いました。それまではあくまで趣味というか、芸人としての武器のひとつでしかなかったので」
さらに、YouTubeの編集を手伝ってくれていた後輩芸人のひょうろくさんも「あらぽんさん、マジでひょうたんを本業にしたほうがいいんじゃないですか」と熱く伝えます。周囲からの言葉を受け、あらぽんさんの中でひょうたんへの想いは強くなっていきました。

そして大きな転機が訪れます。相方・みやぞんさんが独立して所属事務所を離れる決断をしたことを機に、2023年12月、『ANZEN漫才』は解散を発表しました。
「ぼくが誘って結成したコンビだったので、相方が『一人で頑張ってみたい』と言うなら、その気持ちを尊重しようと思いました。事務所が別々になれば一緒に仕事をする機会も減る。それなら、お互い別の道を歩んだほうがいいんじゃないかって」
小学生のころから、みやぞんさんと一緒にコンビで売れることだけを考えてきたあらぽんさん。38歳でその夢を手放すのは、大きな決断でした。みやぞんさんに「それなら解散しよう」と伝えその日の夜のことを、あらぽんさんはこう振り返ります。
「コンビを失ったあと、自分は何をして生きていくのか。考えた末に出てきたのは、やっぱり『ひょうたん』でした。実は解散を伝えた日の夜、すぐにアート制作を始めたんです。『自分がイメージする作品がつくれたら、ひょうたんアーティストとして生きていこう』と決めていて。そうすると、思い描いていたとおりのものができた。だから迷いはなかったです」

ただ、次の道は決まったものの、現実は厳しいものでした。解散後、仕事の依頼はぱったりと途絶え、気づけば94連休に。仕事がなく、収入もない。月収は200円台まで落ち込みました。
「仕事がなくなり、唯一の収入がSNSの広告収入だけになって。その明細が200円台だったときは、さすがに『これはやばいな』と思いました。でも、焦っても仕方ない。当時のぼくは、1年後に個展を開くと決めていたので、それまでにどれだけ良い作品を作れるか、それだけに集中しようと思っていました」
「ここで絶対に人生を変える」と心に誓い、あらぽんさんは約8カ月で160点もの作品を制作。そして宣言どおり、2024年9月に代官山で初の個展を開催しました。
結果は大反響。多くの著名人が訪れ、取材も殺到しました。しかし、あらぽんさんにとって最大の収穫は、数字ではなかったと言います。

「来てくれたお客さん一人ひとりに声をかけて、作品について30分ぐらい話していたんですよ。そのとき、『あれ、これトークライブと同じだ』と気付いたんです。ネタを書かなくても喋りたいことが止まらない。お笑いとアート、形は違っても、自分が表現したいことの根っこは同じだったんです」
現在、あらぽんさんは2025年のカナダでの個展に続き、アジア圏での個展開催を目指しています。そして「いつかテレビの世界にも戻りたい」と笑顔で語りました。
「ひょうたんアーティストとして実績を積んで、その先でまたテレビに戻れたら、以前とはまったく違う自分になれる気がしているんです。もう怖いものはないです。だって、落ちるところまで落ちていますからね」
1歩踏み出すのが怖い人へ。「ダメだったら笑って戻ればいい」
最後に、あらぽんさんに「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするためのアドバイスを伺いました。
「やりたいと思ったことは、言葉にする前にやっちゃったほうがいい。行動せずに頭の中であれこれ考えているときが一番しんどいんですよ。それは自分自身、身をもって経験してきたことなので」

「やってみて『失敗だったな』と思っても、それは前に進んでいる証拠なんですよ。失敗していない人は、何が間違いか分からないから、次の選択肢が見えてこない。動いたからこそ、『じゃあ次はこっちかな』って自然に選べるようになるんです」
「それでも一歩踏み出すのが怖い人は、もう勢いに任せて進むしかない。ぼくもみやぞんに解散を切り出すとき、最初は怖くて言い出せなかったんです。でも、起きてもいないことを不安に思い続けるほうが、もっときつかった。『行っちゃえ』って飛び込んで、ダメだったら笑って帰ってきたらいい」
正解を探して立ち止まるよりも、まず動いてみる。“100円の種”から始まったあらぽんさんの自分らしい道は、今もなお広がりつづけています。
※今回お伝えしきれなかったフルバージョンの動画はYouTube『スタジオパーソル』にて公開中
(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり)

