6月28日の東京都・杉並区長選挙で再選された岸本聡子区長(51)が、2期目の政策を説明した会見で私用のため23日間の長期休暇を取ると表明し、その言葉通り7月13日から休みに入った。
トップが率先して休みをとることで部下も取りやすくなると説明した岸本区長に対し「選挙の時になぜ言わなかったのか」と批判の声が出ている。選挙で保革両陣営が激しく対立したことも尾を引いている気配だ。
2期目を目指した選挙…10万6487票を獲得し大差で再選
東京都出身の岸本区長は大学卒業後、国際NGOに就職。2001年から欧州で暮らし、別の公共政策を扱うシンクタンクNGOの一員として活動してきた。自身のプロフィールでは当時の仕事について、
〈水道など公共サービスの民営化がもたらした課題に対し、住民の手に「公共」を取り戻す運動を支援し、政策提言やネットワークづくりに取り組んできた〉
と説明している。
2022年6月の前回区長選に市民団体の要請を受けて無所属で出馬し、4選を目指した現職を187票差で抑え当選。政党では立憲民主党や共産党、れいわ新選組などが支援してきた。
2期目を目指した今回の選挙では自民党が全面支援した大和田伸前区議(45)や4年前に敗れた田中良前区長(65)ら4人が出馬。区民との対話を重ねる政治が大事だと強調する岸本氏は「決断しない政治のごまかしだ」との批判への反論を続ける戦いになった。
「選挙戦最終盤にダブル台風が関東に近づき、岸本氏は防災対策を優先するとして一時選挙活動を中断しました。それでもふたを開けると投票率は前回比で5ポイント強増えて
42.54%となり、岸本氏は得票率で52.7%となる10万6487票を取りました。予想よりも大差をつけた圧勝で、岸本区政が一定の評価を得ていることがはっきりしました。
いっぽう、SNSや遊説現場では支持者による相手陣営への批判が飛び交い、荒れ模様になりました。大和田氏の出陣式には自民党政治を揶揄するプラカードを持って抗議する人が現れ、選挙後には自民党区議が『区長選挙の結果を見ると、区民の人を見る能力のなさに失望しました』とSNSにポストして批判を浴び、削除する騒ぎも起きました」(社会部記者)
「このたび家庭の事情により長期の休暇をいただく予定です」
2期目に入った岸本区長は7月9日に政策を説明する最初の記者会見を開催。物価高対策の中小事業者支援事業や高齢者のシルバーパス購入費補助、区立中学校の修学旅行費無償化など、すぐに取り組む施策が説明された。ここまでは公約通りだが、冒頭発言の最後に、
「このたび家庭の事情により長期の休暇をいただく予定です」
と表明したのが目を引いた。
岸本氏は、緊急時にはすぐに戻る態勢を取り、休暇中も週1回のオンラインミーティングで情報を聞いて必要な場合は意思決定もすると説明。
「区長が率先して休暇を取ることは個人の事情を超えた意義があると思っております。トップが率先して休みを取ることで職員の皆さんにも安心して長期休暇も含めて取れる組織文化に貢献したい。働き続けられる組織文化を作っていくことは持続可能な自治体経営の1つの重要な要素だと思っております」
と自身の休暇の意義を強調した。
その後、質問に答え、期間は7月13日から8月4日までの23日間で「離れて住んでいる次男のケアのために時間をしっかり使いたい」と説明。2期目が始まった直後の休暇入りは「元々予定していたことです」と話した。
職務代理者は置かず、ほとんどの職員には会見を通じ休暇取得を知らせることになるとしながら、区議会交渉会派の幹事長らには事前に伝えたとし、
「けしからん、みたいな話は一応聞いてはいないんですけれども、一部『今の時代に大切なことだと思います』っていうような好意的なコメントもインフォーマルにはいただきました」
と議会側の反応を紹介した。
首長が職務を一定期間離れることについては全国最年少の女性市長、京都府八幡市の川田翔子市長(35)が9月中旬の出産予定を前に、7月下旬から約4か月間の産休に入ると宣言したことで議論が活発になり、川田市長の選択には肯定的な声が目立つ。
岸本区長もこれまで区職員の休暇取得促進を進めてきた。無給だった非正規の会計年度任用職員の生理休暇を有給にし、2024年度にはこの制度に基づく生理休暇取得者が前年度の約4倍の35人に増えたほか、その後生理休暇の名称を「健康管理休暇」に変更したりしている。
今回も、自分が休む姿を見せることは“休める職場づくり”の一助になる、との考えを強調している。

